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国家の主権がイラクに戻された現在は、その呼び名が“インターナショナル・ゾーン”に改められているものの、イラク戦争後、連合国暫定当局が米軍に長らく管理・支配させていたことから、依然として“グリーン・ゾーン”の名で通用するバグダッド中心部のエリアで、戦中・戦後にどのような混乱が起こっていたのか?!を著わした、ワシントン・ポストのバグダッド元支局長ラジャフ・チャンドラセカランのノンフィクション「インペリアル・ライフ・イン・ジ・エメラルドシティ」を、ユニバーサル映画が社会派エンタテインメントの大作として完成させた「グリーン・ゾーン」が、初日(3月12日)に全米3.003館で集められたチケット代は約500万ドルにしか過ぎませんでした…。予想されるオープニング成績は、だいたい1,500万ドル前後です…。




2003年のバグダッドを舞台に、マット・デイモン演じる米軍准尉ロイ・ミラーが、時のブッシュ大統領がその存在を主張した、フセインの隠し持った大量破壊兵器の所在を突き止める任務を託された結果、大量破壊兵器ではなく、もっと恐ろしい戦争の陰謀の真実にたどり着いてしまうことになる本作は…、この週末に同時公開された他の新作映画(「シーズ・アウト・オブ・マイ・リーグ」、「リメンバー・ミー」、「アワー・ファミリー・ウエディング」)が、どれも大したことない作品ばかりであることからも察せられますが、昨2009年10月にココでお伝えしたように、当初予定していた昨秋の公開をユニバーサル映画があきらめ、アカデミー賞とかぶって、事前の宣伝が行き渡らないオスカー明けのパッとしない時期に、あえて封切ることにした失敗作です…。
と、いきなり、失敗作と言っても、イラク戦争をテーマにした社会派映画はまず興行的に成功しない…という文脈においての失敗作であり、内容的には完全に否定されているわけではありません。
しかし、マット・デイモンとポール・グリーングラス監督のコンビが、代表作の「ボーン」シリーズで魅せたような迫力あるアクション描写は健在とホメられても、「ダレン・シャン」(来週末19日から日本公開)でも大失敗したブライアン・ヘルゲランドの脚本のもたつきなどが指摘され、結局、政治的なメッセージに退屈さを感じる作品…と評されてしまっています。
映画の格付けサイト RottenTomatoes でも、総評は48%で、今のところ、腐敗映画に指定されてしまっています。
しかしながら、評論家やジャーナリストだけの支持に絞ると、約58%に数字がアップするので、社会派として観る向きには、それなりには内容が認められており、映画レビューの取りまとめサイト metacritic では、ひとまず最低ラインに近い合格点の61点をつけてもらっています。
それでもイラク戦争という重い現実や、反米思想的な考えが読み取れる本作は、アメリカの庶民にはあまり快く受け入れてはもらえそうにないわけですが、911テロをテーマにした「ユナイテッド93」(2006年)では、言わばアメリカよりの立場だったポール・グリーングラス監督が、911テロのその後を翻った視点から描いてみせたアンサー映画としては、実に興味深いのではないでしょうか…?!




この「グリーン・ゾーン」に似たタイプの映画としては、サウジアラピアを舞台に、やはり、現実に起こった爆破テロ事件に題材を求めた、ピーター・バーグ監督の傑作社会派エンタテインメント「キングダム/見えざる敵」がありましたが、同映画のオープニング成績は約1,713万ドル(2007年9月28日公開/2,793館)で、最終的な国内での売上げは約4,753万ドルでした。そこに海外市場の数字を上乗せしたトータルは約8,665万ドルだったので、すべての売上げから映画館の取り分を差し引いた約半額の残りで、同映画の製作費=約7,000万ドルが回収できなかったらしいことは火を見るよりも明らかです。
よって、その「キングダム/見えざる敵」を上回る1億ドル以上の製作費をつぎ込みながら、予想されるオープニング成績が、ピーター・バーグ監督作品よりもまだ少ない1,500万ドル前後というのは、興行ランキングでの順位はさておき、前述のようにユニバーサル映画が早々と察したように、この「グリーン・ゾーン」がとっくに大沈没映画であることを暗示しています。となれば、そんな大赤字を食らうことになった製作・配給のユニバーサル映画と、「ボーン」コンビとの間に亀裂が生じ、お前らはもうアテにならんッ!!、「ボーン」シリーズも作らんでいい…ッ!!となり、「ボーン」シリーズ完全終了!!、再開するにしても、スタッフ・キャストを変えて、仕切りなおしの再スタート…と残念な終わりを迎えてしまったのは、やむを得ないのかも…。
しかし、ユニバーサル映画は「ボーン」シリーズで散々、儲けさせてもらったのですから、この「グリーン・ゾーン」のツケを、ジェイソン・ボーンに返してもらうことにしたほうがよかったのでは…?!


ハリウッドで最も過小評価されている監督…というのが、ポール・グリーングラス監督の肩書きとして定着していますが、その評判を拭い去ることは、今後も困難なようですね…。
とりあえず、アメリカでのヒットは見込めそうにないので、海外でガンバるしかない「グリーン・ゾーン」は、5月14日から日本公開です…!!

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