「ヘルボーイ」シリーズのギレルモ・デル・トロ監督が、ジェームズ・キャメロン監督を製作総指揮に迎えて、ユニバーサル映画で H・P・ラヴクラフトの原作を映画化する「狂気の山脈にて」は、実際は先週末の金曜日(3月4日)に、ユニバーサルの社内で製作中止が決定したらしいのにもかかわらず、SFマニアサイトの io9 が、現地週明けの月曜日(7日)に、トム・クルーズ主演で、この初夏の6月にクランクインが決まった！！と誤報したことから、映画界の関係各方面で波紋が巻き起こったのを、日本では火曜日(8日)となる当日にお伝えしました。
その件に関しては、その後、ギレルモ・デル・トロ監督本人が、映画サイト CriterionCast の編集長ライアン・ギャラガーさんの問い合わせのメールに応じて、“事実は正反対。死亡。”という短い返信をしたことで、現実に「狂気の山脈にて」の製作が終了してしまったことを確認できていたのですが、ギレルモ・デル・トロ監督が業界メディア Deadlineのマイク・フレミングのインタビューに応じ、「狂気の山脈にて」の一件について、あらためて思いのたけを語ってくれました！！、また、先の記事では可能性としてお伝えした、レジェンダリー・ピクチャーズでSF版「ゴジラ」？！のモンスター映画「パシフィック・リム」を作ることについて、レジェンダリーがプレスリリース(一番下 ↓)を発行し、来たる9月にクランクインし、2013年夏全米公開の運びになったのを発表し、ギレルモ・デル・トロ監督本人もインタビューの中で、それを認めていますが、現時点では映画の詳細などは秘密につき、多くを語ってはいないので、その部分は割愛させていただきます。




io9 の“「狂気の山脈にて」クランクイン決定！！”のスクープが、誤報というよりは捏造と言われても仕方のない内容だったことについての弾劾などは一切、記さなかったものの、その映画記事のレベルがいかに幼稚であるかを、現実にはギレルモ・デル・トロ監督がレジェンダリー・ピクチャーズで「パシフィック・リム」を作る可能性の方が高いのを報じることで暗に示したマイク・フレミングのインタビューに、ギレルモ・デル・トロ監督が応じ、注目のプロジェクト「狂気の山脈にて」の製作状況や、中止にいたった経緯についての考えを述べたので、以下にその一部を抜粋して、お伝えします。

まず、マイク・フレミングが先の記事で、「狂気の山脈にて」の実現が困難であることの理由としてあげた1億5,000万ドル超の製作費に関して、ユニバーサル映画はその金額を承諾し、支払うつもりであったことを、ギレルモ・デル・トロ監督はほのめかしています。

“何ヶ月もかけて、絵コンテのストーリーボードを描き、映画のVFXを担当する予定のプロダクションとの打ち合わせを重ねて、製作費の見積もりをはじき出したんだ。そして、そうして製作したビジュアルを使った「狂気の山脈にて」のプレゼンに圧倒された彼ら(ユニバーサル映画側)は、脚本を大変に素晴らしいと気に入って称賛し、認めてくれて、ぼくが試算した金額とは違っていたけれど、ぼくたちは製作費のうえで合意することができた。
それでぼくは、カナダとアラスカでロケハンを行い、現地での映画製作の拠点となる事務所をトロントに開こうとしていた矢先の1週間前になって、突然、映画の製作中止決定が下された…。
正直なところ、世間の人と同じように、ぼくにもわけがわからない…。”

…とのことで、ギレルモ・デル・トロ監督は、映画の製作中止が決定してから、ユニバーサル側の窓口となる担当者の重役ドナ・ラングレーとアダム・フォーゲルソンの両者とは電話を介し、言葉を交わしただけで、面と向かって話しあったわけではないので、なぜ、「狂気の山脈にて」はダメなのか？！、同社が下した決定の真意はまだ、自分でも理解できていないそうです。
で、果たして、ユニバーサル映画が合意した製作費の金額が、1億5,000万ドル規模であったのか、どうか、その具体的な数字は、ギレルモ・デル・トロ監督の先のコメントからはわかりませんが、しかし、ギレルモ・デル・トロ監督は…、

“「狂気の山脈にて」を、うちで作らないかと、実は過去に4、5回ほど、他社からオファーを受けているんだ。でも、彼らの申し出は、ぼくからすれば、間違った映画しか作れないようなものだった。
製作費の面で、だいたい2～3,000万ドルは不足した金額だったし、彼らは映画をPG-13に仕上げることを契約に盛り込んでいた。”

…とも、マイク・フレミングに語っているので、ユニバーサル映画が提示した「狂気の山脈にて」の製作費が、ギレルモ・デル・トロ監督が自分のビジョンを実現するのに相当する充分な金額であったことだけはまちがいないようです。

「狂気の山脈にて」にトム・クルーズが主演することが事実だったか、どうかについては、ギレルモ・デル・トロ監督は、“正真正銘その通り！！”と述べ、トム・クルーズとはカナダとアメリカで10回以上にわたって会い、面談し、最終的な脚本の内容をトムが了承して納得し、トム本人が心底から「狂気の山脈にて」に主演したがっていたことを明かしています。しかしながら、“トム・クルーズと契約するか否かの決定権は、ぼくが握っているんじゃない。それはユニバーサル映画の手中にある。”と述べ、“両者は出演契約の締結に向けて、お互いに協力することが必要だった。”ともコメントしているので、トム・クルーズとの交渉が難航した可能性もあるのかもしれません。

「狂気の山脈にて」が製作中止になってしまった理由のひとつとしては、同映画が興行的に不利となる“R指定”(17歳以下の者は鑑賞にあたって、18歳以上の同伴者が必要となる)に仕上がることが憶測される点があげられていますが、それについて、ギレルモ・デル・トロ監督は、先の他社からのオファーを断った理由とあわせて、以下のように語っています。

“契約書に、映画をPG-13に仕上げるとは盛り込めない。なぜなら、それはMPAAが決めることだからだ。ぼくたちはリメイク版「地下室の魔物」のホラー映画「ドント・ビー・アフレイド・オブ・ザ・ダーク」(主演はトムの嫁さんのケイティ・ホームズ/8月12日全米公開)を作った。映画に、下品な言葉のセリフは出てこないし、エッチな場面はもちろん、鮮血が飛び散るシーンすらない。そうした映画の見た目の条件は、まさにPG-13だけれど、映画が緊張感に満ちて怖い…という理由で、MPAAはR指定にしてしまった…。”

…とのことで、同様に「狂気の山脈にて」も、予定していた映画の内容に、下品な言葉や、おびただしい流血などの過激描写はないものの、映画の展開が息の詰まるような緊張に満ちたものであることから、R指定になる可能性を否めないことを認めています。
こうした映画を、本来あるべき判断の基準からは少しズレているのでは…？！と、ジレンマを感じずにはいられないモノサシで測ってしまうことに関して、ギレルモ・デル・トロ監督は以下のような意見も述べています。

“1980年代に映画作りの世界とは、別の場所からやって来た、統計のチャートや、市場を表すグラフといったマーケティングの一切合財が映画産業を支配し、ほとんどの決定がコンピューターの分析で機械的に下されるようになってしまった…。どういった映画を作るべきなのか？！、それを思案する役割は、映画作家の手中からは続々と奪われ、マーケティングの担当者や、会計士がそれを担ってしまっている…。”

と、しかし、ギレルモ・デル・トロ監督は以上のように今日の映画ビジネスのあり方を批判しながらも、ユニバーサル映画がモンスター映画でヒットを飛ばしていた映画黄金時代の1930年代においてすら、続編や前日譚、あるいはスピンオフといった、すでにヒットした実績のある映画の関連作ではないオリジナル映画を作ることはむずかしく、映画製作の状況が厳しいのは過去と現在も変わりないことや、そうした中で自分は、ロン・パールマンといった、こう言っては語弊がありますが、実際のところ、マイナークラスに属する俳優を主演に、スーパーヒーロー映画の「ヘルボーイ」シリーズを作れたこと、また実現不可能と言われた「狂気の山脈にて」をクランクインまで後一歩の段階にまで、こぎつけられたことなどを例にあげ、“パートナーのジェームズ・キャメロン監督は諦めていないし、ぼくを諦めさせてもくれない！！”と、うれしい言葉を発しています。
となれば、それで実際のところ、「狂気の山脈にて」を今後どうするか…？！ですが…、

“即座に進められるカンタンなことじゃないのはわかっている。まずは「狂気の山脈にて」のプロジェクトを、ユニバーサル映画が正規の手続きに則って、手放してくれなければならない。でなければ、映画の企画を他社に持っていくことはできない。「狂気の山脈にて」の映画化に真剣に関心を抱いてくれているらしいスタジオがあり、ぼくたちはその度合いを推し測っているのだけれど、いずれにしたって、ユニバーサル映画が、他社で仕切り直すことを認めてくれなければならない。
ぼくのいま現在の願いは、そのようにぼくたちが新しいホームグラウンドを探すのを、ユニバーサル側が許可してくれることなんだ。”

…とのことで、マイク・フレミングによれば、ジェームズ・キャメロン監督は「アバター」(2009年)で大儲けさせてやった、自分のホームグラウンドである20世紀FOXを筆頭に、数社の映画スタジオに「狂気の山脈にて」を引き続いて製作することを打診しているそうです！！、その20世紀FOX製作・配給？！の暗黒神話「狂気の山脈にて」が実現するには、これまで企画開発の費用を拠出してきたユニバーサル映画が、一体いくらの金額でプロジェクトを転売してくれるか？！が要となるわけですが、それに加えて、20世紀FOXか、あるいは他社からの出資を得て、リスクを分担する共同製作の道を選ぶのか？！といった可能性もなくはないでしょうから、製作総指揮のジェームズ・キャメロン監督の今後のガンバリに期待を託し、「狂気の山脈にて」製作再開の続報が伝えられるのを待ちましょう…！！

なお、ナイスガイで、誰からも愛される超オタクのギレルモ・デル・トロ監督は…、

“ユニバーサル映画で、プロデューサーとして進めている企画が複数あって、これから先の1年半か、2年ぐらいは、ユニバーサル映画とつきあっていくことになる。「狂気の山脈にて」がオジャンになってガッカリし、気持ちがハートブレイクなのは事実だけれど、でも、これはビジネスの判断だから仕方がないよね…。”

と述べて、ユニバーサル映画ともめるつもりもなければ、同社の決めたことに反感を抱いて、根に持つつもりもないことを公明正大にしてくれています。

さて、以上のようなギレルモ・デル・トロ監督の「狂気の山脈にて」製作中止についての考えを読まれて、CIAリーダーのみなさんはどのように思われたでしょうか？！、ひとまず、くり返し言えることは、「狂気の山脈にて」は製作“中止”であって、製作“終了”ではないのが肝心なところだと思います。ユニバーサル映画がスンナリと「狂気の山脈にて」を自由にしてくれるのか、どうか？！はわかりませんが、山が動く奇跡を祈りましょう！！、20世紀FOXは「アバター」のあぶく銭を吐き出す素晴らしいチャンスがめぐって来ました！！

Legendary Pictures announced today that Guillermo del Toro is directing the company's upcoming feature, Pacific Rim, confirmed as his next film. The film has already entered pre-production and will begin principal photography in September 2011. Pacific Rim will be released during summer 2013 and will be produced by Thomas Tull and Jon Jashni for Legendary Pictures and Guillermo del Toro.

Stated Guillermo del Toro: "We started developing PAC RIM a while ago with the mad passion and enthusiasm of a project unwatched and unchecked by politics or comparisons. We designed and shepherded the movie we want to make. We start shooting in September and we hit the ground running because we are so in sync. My partnership with Legendary represents, both in scale and creative demands, a huge step forward for me."




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