ABCニュースほか、全米の各メディアが伝えたところによれば、「イージー・ライダー」でアメリカン・ニューシネマの一時代を築いた伝説的な俳優にして監督、また写真家としても活躍していたデニス・ホッパーが、昨2009年9月ごろより患っていた末期の前立腺癌が引き起こした合併症により、アメリカでは今日となる5月29日(土曜日)の朝8時15分に、ロサンゼルス・ベニスの自宅で、家族や友人らに見送られながら、ついに息をひきとってしまいました…。

伝説的な映画スター、ジェームス・ディーンの舎弟だったテレビ俳優のデニス・ホッパーは、その兄貴の名作「理由なき反抗」(1955年)でスクリーン・デビューを飾り、続けて、やはり、ジェームス・ディーンの名作「ジャイアンツ」(1956年)でも共演を果たしましたが、自動車事故により、わずか24歳の若さでジェームス・ディーンが夭逝し、突然、兄貴分を失ってしまったことのショックが、デニス・ホッパーのアウトロー的な人生観に大きな影響を与えたと一般に考えられています。
その後、主にテレビドラマへの出演を続けながら、バート・ランカスター、カーク・ダグラスの2大スターと共演した「OK牧場の決斗」(1957年)、ポール・ニューマンと共演した「暴力脱獄」(1967年)などを経て、1969年に前述の「イージー・ライダー」で、ピーター・フォンダと共に主演する一方、デニス・ホッパーは映画監督としてデビューを果たし、アーティストとして自分の考えを世の中に伝え始めるようになります。
当時のヒッピー・カルチャーなどを鮮やかに反映させた低予算映画の「イージー・ライダー」は社会に衝撃を与え、ベトナム戦争の暗い影を背負って鬱屈したアメリカン・ニューシネマの代表作として、カルト映画となり、デニス・ホッパーは自分の名前を映画史に刻み付けました
しかしながら、映画スターのお決まりの転落として、アルコールやドラッグなどで身を持ち崩し、映画会社から敬遠されたデニス・ホッパーは、コッポラ監督のベトナム戦争映画の問題作「地獄の黙示録」(1979年)などに姿を見せるも、長らく低迷してしまいます…。

そんなデニス・ホッパーを立ち直らせてくれたのはジーン・ハックマンで、自らが主演するスポーツ映画の感動作「勝利への旅立ち」(1986年)に誘い、アル中から立ち直って、ジーン・ハックマン扮する主人公のバスケットボール・コーチを助けるアシスタントという、本人自身のような役を演じさせ、共感を集めたデニス・ホッパーは、見事にオスカーの最優秀助演男優賞にノミネートされて、映画界の第一線にカムバックを果たしました。
また、同年に公開されたデヴィッド・リンチ監督の「ブルーベルベット」で演じた異常な男の役柄が、そのカムバックを後押ししたのは言うまでもありません。
監督としても、デニス・ホッパーは、ショーン・ペンを起用した「カラーズ/天使の消えた街」(1988年)で復帰に成功しますが、ジョディ・フォスターと共演し、メガホンをとった「ハートに火をつけて」(1989年)は、意図したように仕上げることができず、自分の監督作として公けに認めず、こうしたトラブルの時に使われる匿名のアラン・スミシー名義で発表するハメになってしまいました。

90年代以降は、クエンティン・タランティーノ監督が脚本を執筆した「トゥルー・ロマンス」(1993年)に、クリスチャン・スレーターの主人公の父親として登場し、クリストファー・ウォーケンと忘れがたい名場面(↓)を演じたほか、人気ゲームを映画化した「スーパーマリオ」(1993年)で大魔王クッパに扮するといったユーモラスな一面を見せるなどし、「スピード」(1994年)や、「ウォーターワールド」(1995年)の悪役として、安定した存在感を発揮してくれました。
スチュアート・ゴードン監督のちょっとマヌケなSF映画「スペース・トラッカー」(1997年)で、宇宙トラックの運ちゃん？！のデニス・ホッパーが好きという人もいますよね！！




近年も、ゾンビ・マスター、ジョージ・A・ロメロ監督の「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005年)や、テレビ版の「クラッシュ」などで活躍していたデニス・ホッパーですが、ハリウッドの伝説的なスターが、またひとりいなくなり、映画ファンにとっては、さびしいかぎりです…。
クエンティン・タランティーノ監督がプロデュースした「ヘルライド」(2008年)で、晩年に再び、バイカー映画に登場できたのは、本当によかったと思いますが、今のところ確認できる遺作としては、声優をつとめたライオンズゲートのアニメ映画「アルファとオメガ」(9月全米公開)のようです…。
日本でも個展を開くなど、写真家でもあったデニス・ホッパーの取材にあたり、彼のポートレートを白黒フィルムで撮影することにしたら、キミの考えは正しいと言ってくれた、優しい人でした…。
天国で安らかになど過ごさず、ゴーストライダーとして地獄で暴れてくれたら…ッ！！と願います…！！




【注意】本文の二重使用・無断転載厳禁。引用は当ブログ名を明記し、リンクをお願いします。特に某映画サイトのライターは文章を丸々コピーしないこと！！