************************************************* このCIA★こちら映画中央情報局ですは、2017年4月1日に、コチラの CIA Movie News に移転しました!! *************************************************


マット・デイモンが陰謀?!のようなものに巻き込まれて、走る!!走る!!という映画の見かけにおいては、代表作の「ボーン」シリーズに似た印象を、宣伝を通して、一般に与えられなくもない最新作「ジ・アジャストメント・ビューロー」を…、「グリーン・ゾーン」(2010年)の大失敗の責任のなすりつけ合いで、マット・デイモンとの関係が悪化し、あろうことか「ボーン」シリーズをマット・デイモン抜きで進めることになった、アホとしか思えないユニバーサル映画が全米2,840館の約3,200スクリーンで封切ったオープニング成績は約2,094万ドルで、初登場第2位と、まずまずの出足を走る!!走る!!ことができました…!!


マット・デイモンのようなスターの新作映画のオープニング成績が2,000万ドルそこそこ…というのは、まずまずの出足ではなく、金額として小さいのでは…?!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ボーン」シリーズを除いたマット・デイモンの単独主演作で、これまでに最もオープニング成績がよかった№1の作品は、前述の大失敗作「グリーン・ゾーン」で、以下のような数字でしたから、マット・デイモンはこの「ジ・アジャストメント・ビューロー」で、自己ベストの更新を果たせたことになります!!

   「グリーン・ゾーン」(2010年3月公開/製作費1億ドル超)
     オープニング成績1,430万ドル(3,003館) 国内3,505万ドル+海外5,982万ドル=9,487万ドル

よって、「オーシャンズ12」(2004年)や、「ボーン・アルティメイタム」(2007年)の脚本を執筆し、マット・デイモンとは親密な間柄の脚本家ジョージ・ノルフィが初めて自らメガホンをとって、カリスマSF作家フィリップ・K・ディックの短編小説「調整班」を約5,000万ドルの製作費で映画化した本作を、製作のメディア・ライツ・キャピタル・グループから、約6,200万ドルで購入し、配給したユニバーサル映画としては、手間いらずの約6割以下の原価で、社運を賭けた?!「グリーン・ゾーン」の大損を少し回収することができるかもしれませんね。


コーエン兄弟監督の名作西部劇映画「トゥルー・グリット」(2010年)の大ヒットの人気の後押しも受けたような「ジ・アジャストメント・ビューロー」のまずまずのヒットによって、主演のマット・デイモンとしては、先の「グリーン・ゾーン」のあと、名匠クリント・イーストウッド監督とコンビを組んだ前作「ヒアアフター」(2010年)の痛い空振りに続く、三振アウトの危機を回避し、スターの面目を保てたことになりますし…、

   「ヒアアフター」(2010年10月公開/製作費5,000万ドル)
     オープニング成績1,201万ドル(2,181館) 国内3,274万ドル+海外6,820万ドル=1億94万ドル

また、相手役のヒロインをつとめたエミリー・ブラントにしても、「ウルフマン」のオープニング成績=約3,147万ドル(3,222館)には及ばないものの、前作「ガリバー旅行記」のあらかじめ予定されていた失敗=オープニング成績630万ドル(2,546館)から、V字回復を遂げ、しょせんは第83回アカデミー賞の最優秀メイクアップ賞に選ばれたリック・ベイカーの狼男だけが売り物だった映画とは違い、彼女の魅力が活かされた佳作でヒットを達成できたことになるので、この「ジ・アジャストメント・ビューロー」は、彼女のキャリアにおいて重要な作品になった…と考えているはずです。


ジ・アジャストメント・ビューローの出演者のみなさんが解説してるプロモーションビデオ!!



上院議員を目指すマット・デイモンの青年政治家デヴィッドがスキャンダルに出くわして自信を失い、演説を前に、誰もいないと思ったトイレでスピーチの練習をしていたら、エミリー・ブラントが現れ、もっと自分の素で話しなさい!!とアドバイスしてくれたことで、目からウロコが落ち、男子トイレに隠れていた女なのに、いっぺんに好きになってしまう…!!という「ジ・アジャストメント・ビューロー」は…、
しかし、マット・デイモンがエミリー・ブラントに出会うのは、その偶然の1回だけで、その後、ふたりは永遠に逢わないと “運命” で定められていたはずなのに、マット・デイモンの人生も含め、この世のあらゆる出来事のすべてが決められた運命どおりに進み、秩序が保たれるよう監視する役割をつとめる不思議な支配力を持った “調整班” のひとりで、マット・デイモン担当のハリー(「ハートロッカー」でジェレミー・レナーをぶん殴ってたアンソニー・マッキー)のミスで、ふたりがまた出会ってしまい、恋が進展してしまったことから、本来は人前に現れてはいけないはずの調整班が、運命づけられていないふたりを引き離すため、マット・デイモンの前に立ちふさがる…といった物語です。
そして、運命に逆らえば、エミリー・ブラントに不幸が訪れることを理解させられたマット・デイモンは、彼女の前から姿を消すのですが、エミリー・ブラントが結婚すると知ったマット・デイモンは、他人の決めた運命よりも、自分の意思のほうが大切ではないか…!!と、彼女を取り戻すことを決意する…!!といった展開を迎えることになります。


以上のプロットから、本作にはホワイトハウスを目指す青年の政治ドラマの要素と、恋愛ドラマ、そして、フィリップ・K・ディックのSFという、3つのジャンルが含まれているのを察することができると思いますが、そのように多岐のジャンルに渡った作品は、よく言えば、幅広い層の観客に働きかけができる一方、それぞれの特定のジャンルにこだわった観客への訴求力は、どっちつかずとして、当然に薄められることになるのは、誰でも想像できると思います。


本作の場合は、そのように複数の要素があるとは言え、ドラマの核となっているのは、あくまでも恋愛であり、初監督のジョージ・ノルフィは、フィリップ・K・ディックのSFを手際よく恋愛映画に仕上げた…と、概ね好意的に評されているので、ユニバーサル映画は、その恋愛映画としての魅力にのみ焦点を絞って、本作を売り込むプロモーションをすれば、もう少しオープニング成績は上がったのかもしれませんが、それにしても語らないわけにはいかない、主人公のカップルを取り巻く調整班が存在する…??という設定のパラレルワールドのコンセプトは一般に理解しづらく、かと言って、その “世界が折り重なっている…” というアイディアを、大ヒットSFパズラー「インセプション」(2010年)のように理屈ではなく、奇異なビジュアルのイメージを前面に打ち出してアピールするほどのインパクトにも本作は欠けているので、どうやら、そういった映画の取り扱いづらい多面性ゆえに、ユニバーサル映画はそもそもはサマームービーとして7月に封切る予定だったのをキャンセルし、延期に次ぐ延期で、この春まで公開を持ち越してしまったものと憶測されます。よって、この映画のオープニング成績は、前述のようなキャストの実績や、映画の性質を考慮して判断しても、これが妥当…と思われる数字を示したのではないでしょうか。


どこでもドア+インセプションのチェイス・シーン!!




この「ジ・アジャストメント・ビューロー」の映画の格付けサイト RottenTomatoes での支持率は69%で、レビューのとりまとめサイト Metacritic での評価は、全40件のレビューのうち、よかった!!が21件、まぁまぁが17件、ダメが2件で、総合で60ポイントが与えられています。傑作ではないものの、映画館でお金を払って観るだけの価値はある作品…というのが、総合的に映画の価値を判断した結論ということになりそうです。
なお、ユニバーサル映画の調べによれば、本作のオープニング興行の観客の約4分の3は、30代以上のアダルト層で、約53%と半数強が女性だったとのことですが、あとの半分近くは男性なので、カップルとしてはお互いに楽しめる、お手頃な作品かもしれません。







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