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2ヶ月近く、レビューの間隔が空いてしまい申し訳ありません。ちょっと最近、立て込んでいましたが、やっと素晴らしい映画が観れました!!、恐らく今年最も荘厳な映画の登場でしょう。必見の名作です!!-Wilder




原因不明の大災害で荒廃したアメリカを舞台に、父と子が南を目指し、ひたすら道を突き進む、ロードムービーと呼ぶには余りに壮絶な大河ドラマでした。
同時期に公開された「ブック・オブ・イーライ(「ザ・ウォーカー」)」も同じような設定ながら、息子のために否が応でも暴力に身を投じ、苦悩する前者の主人公と、宗教を盾に暴力に痛快なカタルシスをもたらしてくれた後者の主人公とで見比べてみると面白いかもしれません。

ザ・ロード」は父子の関係性がとりわけ面白く作られており、絶望し生きることを放棄した妻を救えなかった父親の罪の意識が、息子を生き長らえさせる大きな動機になっています。

互いの肉を喰らい合う無法集団のはびこる世界で、息子にだけは人間の善意を忘れないよう、常に見本となるべく良識を持ち続ける父ですが、それでも時には他者への暴力や情け容赦ない仕打ちによって、何とか生き延びようと奔走します。その瞬間に垣間見せる鬼のように非情な彼の姿は善人とは程遠く感じられてしまいます。
この矛盾した姿勢も、すべては自分の死後も息子がこの世界で生き残れるよう非情さを教えて強く育てるためであり、そのことを息子自身も良く理解しています。
時には非情な行動に出る父を糾弾してしまう場面もありますが、父への信頼が崩れることは一切なく、これまでのアポカリプス・ムービーでは描かれてこなかった強固な絆が今作にはしっかり息づいています。

道中、彼らと遭遇する人喰い集団が非常に恐ろしく、殺人描写や、カニバリズム的要素を敢えて映像にしないことで、人間の残酷さを我々に想像させるよう上手く誘導されてしまいます。
前作「プロボジション/血の誓約」(2005年)でも、人間の善意と悪意を生々しい描写で観客に突きつけたジョン・ヒルコート監督の演出力は確かなもので、狂気に満ちた世界の中で、ここぞというタイミングで父子の心通わせる叙情的なシーンを挿入してくるので美が際立ちます。

彩度を徹底的に落とし、全編グレーの色調に統一した画作りで荒廃した世界の背景を的確に表現しています。この色褪せた映像の中に、主人公が回想する荒廃前の世界が色鮮やかに挿入されるのですが、妻役のシャーリーズ・セロンや、草木、動物らの美し過ぎる姿が、よけいに現在の世界に影を落とします。
「ザ・ロード」のアポカリプス世界を描いたコンセプト・アート
荒廃後の世界で生まれたゆえに、母の面影も定かではない息子の心情を、天才子役のコディ・スミット=マクフィー君が繊細に演じ切っており、次世代の演技者として大きな期待を抱かせてくれます。


そして、何と言っても主演のヴィゴ・モーテンセンが圧巻です。役のために髭を伸ばしきり、体重を減らして肋骨をむき出しにする体作りはもちろん、詩情ある彼の表情だけで、この映画の魅力は大幅に上がっています。
この二人が荒廃した世界を背景に歩くだけで、荘厳で詩的な美の世界がスクリーンに映し出されるのです。


友情出演で「プロボジション」に主演したガイ・ピアースが登場しますが、かなり美味しい役どころですので、ファンの方は必見です!!
久しぶりに重厚な大作映画を味わう絶好のチャンスですので、映画ファンのみなさまには、ぜひとも映画館へお出かけいただけたらと思います!! by ワイルダー

「ザ・ロード」を現在公開中の日本での上映館はコチラをご覧下さい。


ザ・ロード予告編



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