セリーナ・ゴメスのお姉さん役は充分に素敵ですが、「デスピカブル・ミー(怪盗グルーの月泥棒)」に、「トイ・ストーリー3」という、並大抵では太刀打ちできない大人気の3Dアニメ映画から、子どもたちの注意を振り向かせることはできず、惨敗を喫してしまったため、この週末の全米映画興行は、先週の前回(16日～18日)から、約9％の売り上げマイナスとなってしまいましたが、「インセプション」の深まる夢に、アンジェリーナ・ジョリーが塩味のスパイスを効かせてくれたおかげで、前年同時期との比較では、全体で約1割程度の実績アップとなりました…！！




★アンジェリーナ・ジョリーが、有能な女性警察官を演じた「ボーン・コレクター」(1989年)以来、約11年ぶりに同映画のフィリップ・ノイス監督とコンビを再結成したスパイ・スリラー「ソルト」を、製作・配給のソニー・ピクチャーズが全米3,612館で封切った結果のオープニング成績は約3,650万ドルで、先週末の土曜日にお伝えした初日レポートの予想＝3,000万ドル台の半ばを、若干ながら、上回りました…！！

アンジェリーナ・ジョリー扮するCIAエージェントのイヴリン・ソルトが、ロシアの二重スパイだとの嫌疑をかけられ、その汚名を払拭すべく、自分を落とし入れた陰謀の黒幕を孤立無援で追うことになる、言わば、アンジェリーナ・ジョリー版「ボーン・アイデンティティー」？！、それとも、アンジェリーナ・ジョリー版「24」？！とでも言った感じの人気アクション・サスペンスの要素を巧みに取り込んだ「ソルト」がオープニング興行で集めた約3,650万ドルというのは、アンジーがオスカーが最優秀主演女優賞にノミネートされた前作の実話スリラー「チェンジリング」(2008年10月公開/製作費5,500万ドル)の最終的な国内での興行成績＝約3,573万ドルを一気に飛び越えています…！！

その比較だけに着目すると、マネーメイキング・スターとしてのアンジェリーナ・ジョリーが帰ってきたような錯覚に陥りそうですが、2年前の2008年のサマームービーだった「ウォンテッド」のオープニング成績は約5,092万ドルで、アクション・スターとしての地位を確立した「トゥームレイダー」(2001年)のオープニング成績は約4,773万ドルでした。
また、今や、現実にダンナのブラッド・ピットと夫婦役で共演した「Mr.＆ Mrs.スミス」(2005年)のオープニング成績は約5,034万ドルだったので、「ソルト」の出足が3,000万ドル台にとどまってしまったのは、アンジェリーナ・ジョリー主演のアクション映画としては、物足りない結果…と、むしろ、受けとめられそうです。


しかしながら、もう観た？！、どう思った？！と、人々が仕事の手を止めてまで、その映画の内容について議論し、その結果、だったら、もう一度観よう！！とリピート鑑賞してしまう強烈な口コミ力で、先週初公開の巨額オープニング成績＝約6,278万ドルからのマイナスを、約30％にとどめ、この週末も約4,350万ドルを稼いでしまった問題作「インセプション」を相手に…、

　　　　　　23日(金) 1,321万ドル ＞ 1,260万ドル
　　　　　　24日(土) 1,664万ドル ＞ 1,342万ドル
　　　　　　25日(日) 1,365万ドル ＞ 1,047万ドル

…と、三盾こそ食らったものの、懸命に後を着いて行けたのは、さすがにアンジェリーナ・ジョリーのスターパワーで、その集客力には、やはり、一目を置かざるをえません。
ただし、上記の数字をよくご覧になれば、おわかりのように、「ソルト」は初日金曜日から、翌土曜日にかけての伸びが6％アップと小さく、日曜日にはマイナス22％も数字を下落させてしまっています。
このことはつまり、映画格付けサイト RottenTomatoes での支持率が約56％で、腐敗映画にレッテルづけられていることからも、観客はけして、「ソルト」に大きな満足まではしていない…という残念な状況を察することができます。

ハリソン・フォードがCIAのジャック・ライアンを演じた「パトリオット・ゲーム」(1992年)と、「今そこにある危機」(1994年)で、スパイ映画のアクション・スリラーを成功させてきた実績のあるフィリップ・ノイス監督と打ち合わせるアンジェリーナ・ジョリー。

共演者は、「2012」(2009年)のキウェテル・イジョフォー(左)と、ベン・アフレックがハリソン・フォードからジャック・ライアン役を引き継いだ「トータル・フィアーズ」(2002年)でもCIAだったセイバートゥース(右)です。

それでも、ソニー・ピクチャーズの調べによれば、「ソルト」のオープニング興行の観客の約53％が女性で、約6割が25歳以上のアダルト層だったとのことですから、大人の観客が少し多かった…とは言え、観客全体を見渡して、老若男女の均等がとれているあたりは、アンジェリーナ・ジョリーが映画スターとして、万人にアピールできる人気の持ち主であることが、あらためて、証明されました。
さらに加えて述べれば、この「ソルト」では、主人公のイヴリン・ソルトが、濡れ衣を着せられてしまった善人なのか？！、それとも、本当に悪人のロシアのスパイで、訪米した自国の大統領を暗殺し、アメリカに核攻撃を仕掛けようとしているのか？！、その正体が不明であるミステリーのサスペンスが見どころとなるわけですが、それは取りも直さず、アンジェリーナ・ジョリーが演技者として、ヒールとベビーフェイスの両方のキャラクターを演じられるポテンシャルと魅力を兼ね備えている類い稀な女優であることをも、やはり、あらためて証明した点も忘れてはなりません。

当初に主演が予定されていたトム・クルーズでは、お前、絶対に悪人をやるわけないよな…！！と、観客にハナから見透かされてしまうため、企画の意図を忠実に映画化するという意味においても、落ち目のトム・クルーズではなく、魔性を秘めた女としてアンジェリーナ・ジョリーを起用したソニーの選択は正しかったことになります。

アンジーでも、「インセプション」ブームの火を消すことはできませんでした…。

よって、以上を踏まえて、BEST10圏内に、他に現実を舞台にしたアクション映画が見当たらないことからも、ソニピは公開日設定の配給戦略のみならず、プレスをワシントンD.C.に招いて、実際に元KGBのスパイだった人物や、国土安全保障省の元役人らと懇談させたジャーナリスティックな側面からのプロモーションもよかったが、クリス・ノーラン監督の発想が想像以上にスゴすぎたので、アンジェリーナ・ジョリー本来の爆発力が打ち消されてしまった…と、結論づけることができそうです。
なお、プロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは、この「ソルト」のオープニング成績の結果をよしとし、今後の海外市場での反応を待って、続編の「ソルト2」の製作に乗り出す旨の見解を、早くも示しています。
殺し屋映画「ウォンテッド」の続きは、クリステン・スチュワートに譲ることにしたアンジェリーナ・ジョリーの「ソルト・スプレマシー」？！、そして、「ソルト・アルティメイタム」？！をご覧になりたい方は、映画館にお出かけください…！！


「ソルト」 テレビスポット3連発！！








※参考資料
「ウォンテッド」(2008年6月公開/製作費 7,500万ドル/国内成績 1億3,450万ドル/世界計 3億4,143万ドル)
「Mr.＆ Mrs.スミス」(2005年6月公開//製作費 1億1,000万ドル/国内成績 1億8,633万ドル/世界計 4億7,820万ドル)
「トゥームレイダー」(2001年6月公開/製作費 1億1,500万ドル/国内成績 1億3,116万ドル/世界計 2億7,470万ドル)



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