超大作「ロビン・フッド」がライバル映画の「アイアンマン2」にアッサリと敗北し、映画スタジオの重役のクビをさらに切り落としかねないのが恐ろしい5月第2週の興行レポート!!
by
Billy
2010年5月17日月曜日
ひとまず、新作の目玉の「ロビン・フッド」の解説だけ、アップしておきます…!!
★昨2009年10月にユニバーサル映画の代表の座を追われたマーク・シュミューガー氏が、クビにされた原因としては、ウィル・フェレルが主演した「ランド・オブ・ザ・ロスト」や、アダム・サンドラーとセス・ローゲンが共演した「ファニーピープル」がヒットせず、大赤字を出したことが主な理由とされていますが、実はそこに含まれていたのが、リドリー・スコット監督とラッセル・クロウという、とっくに新鮮さを欠いているコンビが、自分たちの新作「ロビン・フッド」のために湯水のようにお金を持ち出すのを止められなかったこと…。
ユニバーサル映画は税金の控除を受けるなどの節約をはかった「ロビン・フッド」の製作費は、およそ約1億5,500万ドルだと言っていますが、実のところは2億2,500万ドル前後が費やされた…というのが、もっぱらの定説で、2週連続第1位の「アイアンマン2」よりも、ラッセル・クロウが弓矢で戦う中世の映画の方が、どうやら、お金がかけられていることになります。
そこで、以下のデータを見ていただきたいのですが、リドリー・スコット監督とラッセル・クロウがコンビを組んだ過去の4作品のオープニング成績です。
「ボディ・オブ・ライズ」(2008年10月公開) … 1,288万ドル(2,710館)
「アメリカン・ギャングスター」(2007年11月公開) … 4,356万ドル(3,054館)
「プロヴァンスの贈りもの」(2006年11月公開) … 372万ドル(2,066館)
「グラディエーター」(2000年5月公開) … 3,481万ドル(2,938館)
こうした実績に照らし合わせれば、3,503館の約5,700スクリーンで封切られた「ロビン・フッド」のオープニング成績が約3,711万ドルで、「グラディエーター」と「アメリカン・ギャングスター」の中間に位置しているのは、何となく、まぁ、このコンビなら、せいぜい、そんなもんだろう…と納得できないでしょうか?!
しかし、アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、ラッセル・クロウも最優秀主演男優賞に選ばれる旋風を巻き起こした「グラディエーター」の製作費は約1億3,000万ドルで、「アメリカン・ギャングスター」の製作費は1億ドルでした。
そして、「グラディエーター」の最終的な興行成績は、国内で約1億8,770万ドル、全世界でのトータルが約4億5,764万ドル。「アメリカン・ギャングスター」は国内=約1億3,016万ドル、全世界計=約2億6,646万ドルでした。
つまり、1億ドルそこそこで作っていれば、リドリー・スコット監督とラッセル・クロウが最大のポテンシャルを発揮した場合、黒字に成り得る可能性があるわけです。
また、リドリー・スコット監督が、やはり、中世を舞台に十字軍の騎士を描いた、オーランド・ブルーム主演作「キングダム・オブ・ヘブン」(2005年5月公開)の実績は、製作費=約1億3,000万ドルに対し、オープニング成績1,963万ドル/国内成績4,739万ドル/全世界トータル2億1,165万ドルでした。
よって、冒頭で紹介したマーク・シュミューガー氏がクビになるのも、おいおい、マーク、あんた、「ロビン・フッド」作るのに2億ドル以上かけるのは無茶だろう…ッ!!と、CIAリーダーのみなさんも、仕方がない、自分だって、マークをクビにするしかない…!!とわかっていただけたかもしれません。
ただし、「キングダム・オブ・ヘブン」のデータで、アレ…??と思ったかもしれませんが、国内では「アメリカン・ギャングスター」のオープニング成績ぐらいしか稼げていないのに、全世界では「アメリカン・ギャングスター」と同じように2億ドルを突破しています。すなわち、史劇は海外の興行で非常に強く、人気が高いということが理解されるわけで、「キングダム・オブ・ヘブン」の売上げの8割近くは北米以外の諸外国でまかなわれています。
そうした傾向を踏まえると、「ロビン・フッド」がカンヌ国際映画祭のオープニング作品として上映されたのは、世界に向けて大きな宣伝効果が発揮される可能性が高く、北米でのオープニング成績が平凡で、期待されたような4,000万ドル超から5,000万ドルの数字に届かなかったからと言って、そういきなり悲観的になる必要もないでしょう。
…と言って終えたいところですが、「ロビン・フッド」の映画の格付けサイト Rotten tomatoes での評価の支持率は44%で“腐敗映画”にランク付けされており、誰もが知っている義賊のヒーローのロビン・フッドではなく、十字軍の弓矢の名射手のアーチャー、ロビン・ロングストライドが、どうしてシャーウッドの森のアウトローになってしまったのか?!という、言わば、プリクエールの前日譚として、“そして、ロビン・フッドの伝説がはじまる…”と終わる本作は、「ロビン・フッド」という題名だから“ロビン・フッドの映画”だと思って観る観客の期待をハズしている…と、映画の狙いは何だったのか?!という矛盾が指摘され、カンヌでのレビューも賛否半ばの平凡な評価しか得られていません。
よって、ラッセル・クロウは続編の可能性なども口にしていますが、ロビン・フッドの伝説は、まず始まらない…と思っておいた方がいいのではないでしょうか…?!
ロビン・フッドの戦友の妻として、夫の形見の剣を届けてくれたロビンと出会うことになるヒロインのマリアンを、シエナ・ミラーに代わって演じているのは、エリザベス女王のケイト・ブランシェット(↑)。イングランドの伝説のヒーローとヒロインを、共にオーストラリアの俳優が演じていることになりますね。
その他の共演者は、「シャーロック・ホームズ」(2009年)に「キック・アス」(全米公開中)と、最近の話題作は、この人が悪役として出てこないことには成立しない?!マーク・ストロング(↓)が、「ボディ・オブ・ライズ」から続けて、リドリー・スコット監督&ラッセル・クロウのコンビ作に連続出演を果たし、やはり、「ボディ・オブ・ライズ」に出演していたオスカー・アイザック(↓ 下に写真)が、兄リチャードの死後、王位を継承するイングランド王ジョンを演じています。
マックス・フォン・シドー(左)、ラッセル・クロウと打ち合わせるリドリー・スコット監督。 |
オスカー・アイザックのジョン王と、レア・セドゥーの妃イザベラ。 |
“もし、義賊のロビン・フッドが現在いたなら、不誠実なメディアを標的にして戦うだろう…”などと、カンヌの記者会見で悪態の冗談を飛ばし、相変わらずのマスコミ嫌いを露わにしていたラッセル・クロウですが、巨匠リドリー・スコット監督とのコンビを今後も続けるには、もう少し愛想よくして、「ロビン・フッド」がヒットするよう、よく書いてもらえるように努力したほうがよかったかもしれませんね。
リドリー・スコット監督は膝の手術のため、カンヌ国際映画祭を欠席し、プロモーションをラッセル・クロウに任せてしまったため、スターの唯我独尊を止められませんでした…。
「ロビン・フッド」 予告編
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