実際の本の目次では、何も叛乱していない被害者のパトリック少年を犯人に仕立て上げてしまっている、意味不明な編集の映画秘宝ムック「殺人大パニック!!」に掲載した「友だちがほしかった…、ドイツ発、孤独な17歳の銃乱射!!」の原稿!!(Part-Ⅰ)の続きです…!! →
そうした息子ティムからのSOSに対して、父親エルク(写真 → は、プライバシーに配慮し、顔にモザイクがかけられている…)は自分の友人に相談し、友人の19歳の息子にティムと遊んでくれるように頼んでみた。19歳の少年は親たちから言われて、ティムの相手をしてやったが、コンバット・ゲームでティムが少年を容赦なく蜂の巣にするように撃ち続けるので、たまらずブチ切れて、ティムとの関係を断ち切ってしまった。少年は「おもちゃのエアガンでも撃たれれば痛いということを、あいつは理解していなかった…」と振り返り、「父親のベレッタを手に入れるつもりだ…」と、ティムが実弾を撃つ予定だと話していたことを明かしている。
乱射事件の前触れは充分に警告されていた訳だ。エルクが犯行の前夜、落ち込むティムをどう慰めたのかは知らされていないが、父親がもっと敏感だったなら、自分の息子を含めて計16人もの人間を死なさずにはすんだのかもしれない。
尚、この事件では、インターネットの掲示板でティムが犯行を前夜に予告していたとのニュースも報じられたが、警察はティムのパソコンが当夜、同掲示板のサーバーにアクセスしていないことを確認しているので、掲示板の書き込みは別人か、デマの可能性の方が高い。
「俺には妻とふたりの子どもがいるんだ…、そんな所帯持ちを殺したりはしないだろ?」と、イゴールはハンドルを操りながら、自分の身の上をティムに語って聞かせていた。ティムが「あぁ、そのつもりはない、とりあえず、今のところはない」と答えたので、フォークリフトのオペレーターの仕事で家族を養っていかなければならないイゴールはひと安心できたが、それは彼がティムと親密な関係を築こうと会話を途切れさせずに続けてきた努力の成果だった。イゴールはティムを落ち着かせ、彼の友だちになるために、「いい銃だよね、ベレッタかい?」や、「口径は?」など、終始、ティムとのおしゃべりを続けながら運転してきたのだった。
が、そのコミュニケーションのおかげで、彼はティムがかなり異常な少年であることにも気づかされた。イゴールが「なぁ、どうして、学校で銃を乱射したんだよ?」と犯行の動機を尋ねると、ティムは「だって、そりゃ、楽しくなれるからだよ」などと平然と答えていた。そして、ティムは車窓から子どもや、ベビーカーを押しながら歩く母親の姿を眺めると、また銃をぶっ放したい衝動に駆られたらしく、「あ、ちょっと停めてくれていいかな?、楽しんできたいんだけど」と言い、次のサービス・エリアで車を停めるようにイゴールに命じた。
しかし、サービス・エリアに近づき、パトカーがいるのに気づくと、「止まらず、このまま行って…」と、ティムは指示をあらためた。サービスエリアで停車の隙に脱出できると期待していたイゴールはチャンスを失ってしまった。
その後、ティムが「どこか撃ちまくって、ガキをたくさん殺せるような学校知ってる?」と尋ねてきたので、イゴールはいよいよ、この狂った殺戮マシーンを止めなければ、えらいことになると恐れ、どうにかしなければ…ッ!と内心の正義感に焦り始めた。と、折りしもパトカーが後ろから、ふたりのワーゲンを追跡してくるのに、イゴールもティムも気がついた…!!
ティムは途端に動揺し、ガタガタと体を震わせ始めたので、イゴールは少年が少し気の毒になり、「大丈夫だよ…」と言いながら、後部座席に手をまわして、ティムのひざをさすったが、その手はすぐに払いのけられてしまった。このようにティムが冷静を失うことは、つまり自分が命が落とす危険のシグナルだと察知したイゴールは意を決して、クルマから脱出するしかないと覚悟を固めた。
やがて、少し行くと前方に検問が見えた。ティムはそれを避けて、わき道に入るようにイゴールに命じた。イゴールがハンドルを切ると、わき道は上り坂だった。
イゴールはここがチャンスだ!!と思い、いきなりドアを開くと、走る車から道路に身を投げ出した…ッ!!。坂道で運転手を失えば、クルマは自然とバックする。それで自分とティムとの距離が遠のけば、飛んでくる弾をかわせるチャンスが増すはずだと、イゴールはとっさに判断したのだった。地面を転がって立ち上がったイゴールは、映画で観たようにジグザグに方向を変える走り方で、警官らのいる方に向って、後ろを見ずに駆け出した…!!
ティムは突然、自分を裏切って逃げ出したイゴールを撃ち殺すより前に、もはや近くに警官隊が大勢いる以上、自分こそ早く、この場を立ち去るしかなかった。
クルマから降りて逃げ出したティムを、イゴールの大声の呼びかけに応じた警官隊がすぐに追い始めた…!!、そして、ティムは次のクルマが必要だと思ったのか、道路わきの自動車販売店 ハーン・オートハウスの展示場に逃げ込んだ。
クルマが居並ぶ屋外駐車場のような展示場(←)で、ティムは商談中だった従業員と客を射殺したが、追ってきた警官の狙撃でティム自身も足を撃たれて、地面に吹っ飛ぶように倒れ込んだ…ッ!!、それで怒りが破裂したのか、ティムは足を引きずりながら立ち上がると、大声で警官隊に何か怒鳴りながら、拳銃に弾を詰め込み始めた…。
警察の発表では、この後、ティムは自分を撃って自殺したことになっているが、居合わせたやじ馬がケータイで撮ったと思われる動画では、警察がティムを射殺したように見えなくもない。ティムは何か叫んでいたかと思うと、突然、糸を切られたあやつり人形のようにストンと地面に崩れ落ちて、動かなくなった…。時刻は正午の30分をまわっていた。ティムが学校で銃を乱射し始めてから約3時間が過ぎていた。その間にティムは警察が数えられただけで計112発の弾丸を発射し、15人を殺した。死んだティムの手元にはまだ130発程度の弾が残っていた…。
こうして犯人死亡で事件が決着し、押し寄せるマスコミに、警官のあるひとりは、自分が突入した現場の教室で見た光景として、後頭部を吹っ飛ばされ、脳みそと血を垂れ流しながら、机に突っ伏した少女の手にしっかりと鉛筆がまだ握りしめられたままだったのが忘れられない…と惨状の様子を詳しく語った後で、眠っているような少女の顔に恐怖の表情はなく、恐らく彼女は何が起きたのかもわからない即死だったろう…と、慰めのような言葉をつけ足し述べた。
このあまりにも惨い事件に、ドイツの女性首相アンゲラ・メルケルは、「なぜ、このような事件が起きるのか理解できない…」とやるせない緊急声明を発表し、被害者とその家族に哀悼を捧げて、国中が弔意を示す半旗を掲げた。
翌週の水曜日18日に行われた被害者の合同葬儀には約2万7,000人以上が参列した。マスコミは連日、事件の原因や動機の議論をくり返し、世論を恐れた大手のショッピングセンターはシューティング・ゲームや、バイオレンス映画のDVDを店頭から撤去してしまった…。
アルベルトビレ実科学校は事件から12日後、授業を再開したが、教室は公民館などに移された。校舎はいずれ解体され、学校自体、廃校となる。生徒たちはバラバラに近隣の学校に散って転校することになった。ティム・クレッチュマーが6年間通う間に、ひとりの友人も、ましてやガールフレンドなんてできもしなかった学校は、最期に彼に殺戮の楽しみの場を与え、役割を終えるハメになってしまった。
生前のティムを理解できた者はひとりもいなかったが、死後もまだ誰も彼のことがわからない。しかし、事件当日、武装した警官隊に隠居宅への突入を食らったティムの祖父母(→)は、「よく遊びに来ては猫を可愛がってくれた優しい孫でね…、妹が困るといつも助けてあげていた、本当にいいお兄ちゃんだったよ…」と、ティムの素顔を語っている…。
(2009年4月発行 / 洋泉社MOOK 別冊映画秘宝「マーダー・ウォッチャー 殺人大パニック!!」掲載)
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