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このブログでは今年1月に初めて紹介した、スウェーデンの美しいヴァンパイア映画「レット・ザ・ライト・ワン・イン」が、アメリカと北欧で先週末24日(金)から、ついに封切られたので、あらためて本作を紹介し、動画をご覧いただきます。


パンズ・ラビリンス」(2006年)のギレルモ・デル・トロ監督も“恐ろしいおとぎ話を語ったポエムのように美しい映画”と絶賛し、今年2008年のジャンル映画の範疇では、「バットマン/ダークナイト」と並んで重要な作品と評されている本作は、スウェーデンの人気ホラー作家、ジョン・アヴィデ・リンクイスト(John Ajvide Lindqvist)が、2004年に発表したデビュー作のベストセラーを映画化したものです。
監督のトマス・アルフレッドソン(↓写真)は原作を3年前に友人から贈られ、読むなり、大きな感銘を受けました。トマス・アルフレッドソン監督がそのように原作に心を動かされたのは、監督自身も、物語の主人公である12歳の少年オスカーと同様に、かつていじめられていた経験があり、このヴァンパイア物語に込められたテーマが強烈に理解できたからだと、アメリカのメディアのインタビューなどで語っています。

レット・ザ・ライト・ワン・イン-トマス・アルフレッドソン


本作の物語は、そのいじめられっ子の少年オスカーが暮らすマンションの隣りに引越してきた同い年の少女エリが、弱虫なオスカーを助けてくれたことから、ふたりは親友になりますが、エリは人間ではなく、ヴァンパイアだった…というものです。
トマス・アルフレッドソン監督は、「このオスカーとエリはコインの表裏のような関係で、不死身のヴァンパイアのエリは、孤独で強くなりたいと願うオスカーの心を写し出した鏡の存在だ」と語っています。それは先ほど記したように、トマス・アルフレッドソン監督自身がいじめられていた経験の辛かった記憶から導き出された解釈ですが、そのように現実的な感情に裏打ちされる意味づけを持って、ヴァンパイアのホラー・ファンタジーを描いた点が、本作が単にジャンル映画の1本と軽んじられず、各国で絶賛されることになった理由のひとつだと思われます。
また、トマス・アルフレッドソン監督は本作は「ホラーではなく、ラブストーリーとして観てほしい」と語っており、初恋のジュヴナイルな感性と、それを過ぎて大人へとなっていく思春期の成長などが、ヴァンパイアの設定とうまく象徴的に呼応づけられているようです。
そういった繊細な感情を表現できる子役を探すキャスティングには大変、苦労したと、トマス・アルフレッドソン監督は振り返り、主演のふたりを探すのに国中をまわって、1年以上を要したそうです。その甲斐あって、動画をご覧になれば、おわかりのように主演のふたりは本作の透明感あるヴィジュアルにマッチし、映画のムードを醸し出しています。

本作は主にストックホルム郊外の典型的な1950年代の住宅地で撮影されましたが、トマス・アルフレッドソン監督によれば、「ストックホルムは、みんなが思っているようには寒くない」(!)とのことで、屋外の場面では、雪と氷の冬の景色を求めて、スウェーデン北東の海に面した町ルーレオまで、わざわざロケに出かけたそうです。
トマス・アルフレッドソン監督は、本や音楽は自分の趣味で選ぶものであり、人から本をプレゼントされるのは大嫌いでガマンならなかったそうですが、本作の原作に関しては、素直に受け取り、読んでみて正解でした。

さて、上 ↑ の動画は、本作のタイトルである「レット・ザ・ライト・ワン・イン」(=正しき者を招け)の由来を伝えていますね。最近のヴァンパイア映画では、あまり古典的な吸血鬼の約束事は守られていませんが、吸血鬼は本来は招かれない限り、他人の家には入れないもの。動画の中で、訪ねてきたエリが「私を招待して…」と言いますが、オスカーはそれをまともに受け止めず、「招待しなかったら、どうなるんだよ?!、何か見えない障害物でもある訳?!」とちゃかしてしまいます。そんなキチンと招待してくれないオスカーでしたが、いじらしいエリは好きなオスカーのために招待がないまま、ヴァンパイアの掟を破って、他人の家に足を踏み入れます。そして、エリは…。
この場面だけでも、この映画はタダゴトではなく、どうして、ヴァンパイア映画史上最高傑作として各国で大絶賛されているのか?!、察することができるのではないでしょうか?




↑ エリが、オスカーのほっぺの絆創膏を気にして、「どうしたの…?」と訊ねます。オスカーは少し困ったように「同級生が…」とイジメにあってることを告白します。すると、エリは「やり返すのよ、倍にして返しなさい…ッ」とオスカーを勇気づけますが、意気地のないオスカーは「でも、もし…」と臆病風に吹かれています。
そんなオスカーの手にふれたエリは、「大丈夫、私が助けるから…」、ヴァンパイアのエリがどんな風に助けるのか…?!、優しさと恐ろしさが入り混じった場面です。



↑ 警察の手で病院に運び込まれた父親を探しに来たエリが、当直の看護婦さんにお父さんのことを訊きます。
看護婦さんは、「あなたのお父さんは7階よ」と教えてくれますが、そこは立ち入り禁止区域で、行くのには許可がいると言われます。エリのために看護婦さんは許可を申し出ようとしますが、エリは「いいの…」と言って立ち去ります。
歩き去るエリが裸足であることに気づいた看護婦さんは、お父さんのこともあり、「なんて、かわいそうな子なの…」と心配になって、エリの後を追います。そして、病院の外まで来た看護婦さんですが、エリの姿はどこにも見えません…。病院の壁に注目しておいてください。



↑ オスカーから、「ヴァンパイアなの…?」と正体を訊ねられたエリが、「私は血を吸ってるの…」と真実を打ち明けます。ひび割れたような模様の入ったガラス越しに、ふれ合うことなく手と手をあわせる少年と少女の姿の描き方は、先のトマス・アルフレッドソン監督の「ふたりはコインの表裏で、エリはオスカーを写す鏡…」という言葉を、まさに映像で表現したような場面と見受けられます。似たような演出は、過去の映画でもたくさん観られますが、このシーンも大変、美しい名場面として記憶されそうです。

この「レット・ザ・ライト・ワン・イン」が日本で、どのような形で公開されるか?は不明ですが、海外で極めて高い評価を受け、公開を待たずして、ハリウッド版リメイクも緊急に作られることになりましたから、いずれ観られるのは間違いないと思います。
トマス・アルフレッドソン監督は、スウェーデン映画界は海賊版の違法ダウンロードのため、産業として機能しなくなり、崩壊寸前だとアメリカで危機を訴えました。名匠イングマル・ベイルマン監督(「野いちご」1957年)の作品を生んだスウェーデン映画を救うためにも、正規のルートで、この映画を支援してあげてほしいと思います。「レット・ザ・ライト・ワン・イン」のスウェーデン版オリジナル予告編はコチラUSA版予告編はコチラです。
さて、本作はアメリカではどれぐらい、お客さんが入ったのでしょう?!、あす月曜アサ更新の全米映画ボックスオフィスBEST10でご確認ください!!




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