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映画の宣伝における当然のたしなみのマナー?!として、これは現実に起きた事故をもとに作った映画です!!…などとおっしゃられる製作・配給の20世紀FOXが、名優デンゼル・ワシントンとトニー・スコット監督の5本めのコンビ作となるジェネリック・ムービー(昔あった映画を焼き直したような代替作品)の「アンストッパブル」(2011年1月7日公開)を全米3,207館の約4,300スクリーンで封切ったオープニング成績は約2,350万ドルで、共演者にクリス・パインAKAカーク船長バージョン 2.0を起用した効果も特になく、平凡な数字をおさめて、初登場第2位になりました…。







平凡な数字…の意味は、下 ↓ に羅列したデンゼル・ワシントンとトニー・スコット監督の過去の4本のコンビ作の興行成績を見てもらえば、一目瞭然に理解することが可能です。

「サブウェイ123」(2009年6月12日公開/製作費1億ドル/R指定)
  オープニング成績/2,337万ドル(3,074館) 国内/6,545万ドル+海外1億5,016万ドル=1億5,016万ドル

「デジャヴ」(2006年11月22日公開/製作費7,500万ドル/PG-13)
  オープニング成績/2,057万ドル(3,108館) 国内/6,403万ドル+海外1億1,651万ドル=1億8,055万ドル

「マイ・ボディガード」(2004年4月21日公開/製作費7,000万ドル/R指定)
  オープニング成績/2,275万ドル(2,980館) 国内/7,791万ドル+海外5,238万ドル=1億3,029万ドル

「クリムゾン・タイド」(1995年5月12日公開/製作費5,300万ドル/R指定)
  オープニング成績/1,861万ドル(2,382館) 国内/9,138万ドル+海外6,600万ドル=1億5,738万ドル

最初のコンビ作である「クリムゾン・タイド」は、もう15年も前の作品で、潜水艦の中で物語が展開するという特殊な状況設定だったことからも、「アンストッパブル」の興行成績を分析するうえで、あまり参考にはなりませんが、それ以外の最近の3本のサスペンス映画は、いずれもオープニング成績が2,000万ドルそこそこで、「アンストッパブル」がこの週末に売り上げた金額とかけ離れて大差なかったことがわかります。
特に同じく列車を舞台とした前作「サブウェイ123」とは近似値で、1館あたりの売り上げで比較しても、同映画の封切りの週末のアベレージが約7,603ドルだったのに対し、「アンストッパブル」は7,328ドルですから、デンゼル・ワシントンとトニー・スコット監督とのコンビ作は当たりハズレなく、必ず、そこそこヒットする…というのがよくわかります。


しかしながら、最終的な結果としては、製作費に約1億ドルが費やされた「サブウェイ123」のトータルの興行実績が約1億5,016万ドルというのは、映画館の売り上げだけでは黒字どころか、製作費の回収もできていない(売り上げの約半分は映画館の取り分)ことになり、収支は赤字だったことになります。

よって、デンゼル・ワシントンとトニー・スコット監督とのコンビ作は、さらに前作の「デジャヴ」や、「マイ・ボディガード」のように、製作費7,000万ドル台を上限に作らなければならないことになるので、「アンストッパブル」の製作開始にあたって、20世紀FOXがデンゼル・ワシントンにギャラを値下げしてくれるよう交渉し…、そのおかげで本作は一時製作中止の暗礁に乗り上げたのですが、同社の要求は企業としては当然の判断だったことが窺い知れます。
であるのにもかかわらず、「アンストッパブル」の製作費には結局、公称でやはり、約1億ドルが費やされていますから、本作が「サブウェイ123」と同じような興行展開をたどった場合、そのリメイク映画を作ったソニー・ピクチャーズと同じように、過去にあった映画やドラマのリメイクに等しいジェネリック・ムービー=つまり、どうでもいい映画を作った20世紀FOXも赤字の煮え湯を呑まされることになってしまうかもしれません。


アンストッパブル予告編



ただし、その「サブウェイ123」の映画の格付けサイト RottenTomatoes における支持率が51%で、特に好評価もされていないのに対して、暴走列車は今のところ、86%の高い支持で“新鮮映画”に指定されていますから、前作よりも数字の伸びを若干、期待できる可能性もまた、あるのかもしれません。


そこで、実際にレビューの詳細を検分していくと、危険な化学物質を積んだ列車が無人で暴走し、それが人口密集地で脱線する大災害を、デンゼル・ワシントンの機関士フランクとカーク船長バージョン 2.0の車掌ウィルのコンビが未然に防ごうとする…!!というだけのシンプルな物語は、それだけを映画にして描けば、せいぜい60分程度の作品にしかならないことから、98分の映画らしい上映時間の尺を維持するために、登場人物のバックグラウンドや、周囲の脇役の反応などを間に挟んだことで、当然の成り行きとして、本題の列車暴走のサスペンスの度合いが薄まってしまった…といった指摘が多多されており、この映画の製作者らは“実話の映画化”にこだわらず、物語をふくらませて、暴走列車の事故の背後に、主人公のふたりが立ち向かうべき別の敵を設定し、ストーリーを二転三転させたほうが、上映時間を水増しするようなことにならず、よかったのでは…?!と、同様に“暴走”をテーマにして、バスを題材にしたキアヌ・リーヴスの「スピード」(1994年)が、最後はバスのお話ではなく、クライマックスが地下鉄の暴走に転じていたことを例にあげ、「アンストッパブル」に、主演のふたりの息のあった申し分ない緊迫感の演技がなかったならば、せいぜい、この作品はテレビ映画か、DVDスルー映画ていどの価値しかない、まさにジェネリック・ムービーであることが伝えられています。


で、そうしたレビューを32件あつめた、レビューのとりまとめサイトのMetacritic では、24件のレビューが好評で、8件がまあまあ、不評でけなしているレビューはない…といったデータから、トータルで69点のスコアを与えているので…、以上を総評してまとめると、この「アンストッパブル」は鑑賞中はそれなりにハラハラして楽しめはするものの、映画自体に目新しさはまるでなく、観終わったあとで即座に忘れてしまうような、言わば、時間つぶしには最適な娯楽作品ですよ…といった、まぁ、そんな感じかな…?!といった映画を観なれているファンの人なら誰でも思う予想の見込みが、その通りの結果で裏づけされた…といったところですね。


なお、配給の20世紀FOXの出口調査の結果の発表によれば、「アンストッパブル」のオープニング興行の観客の男女比はほぼ半々で、全体の約65%が25歳以上のアダルト層だった…とのことなので、前作の「サブウェイ123」の観客の統計=約54%が男性で、全体の62%が30代以上と、やはり大差はなかったようです。


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