3D映画サイト MarketSaw が、ピーター・ジャクソン監督のデジタルVFX工房 WETA の関係者から得た内部情報によれば、続編の「ディストリクト10」(仮題)の撮影が本秋10月からスタートする予定らしい、SFモッキュメンタリー・アクションの大ヒット作「ディストリクト9」(邦題「第9地区」)のレビューを、Mr・サンスターさんが寄稿してくれました…!!
異色のSF映画として話題の「第9地区」を観てきました。噂通りほんとに異色作でした。
本作は、「インデペンデス・デイ」、「マーズ・アタック」、「宇宙戦争」のような侵略ものではなく、「エイリアン」、「プレデター」のようなパニックものでもなく、エイリアンと人間との奇妙な共生関係をリアルに描いたドキュメントもので、ストーリーはエイリアンが地球に来た経緯をニュース映像という形で見せ、全編を通して、関係者、専門家のインタビュー映像を随所に挿入するというスタイルで進行させることで、作品全体をリアリティー溢れるものにしています。
エイリアンの設定も、宇宙船が故障したために、たまたま地球に来て、地球人に渋々、受け入れられた難民で、人間から卑下される存在になっているという、これまでにない斬新なもので、政府が居留地を与えた後は、救援策も取らなかったために、スクラップやゴミで作った掘っ立て小屋で生活し、近隣住民からは差別され、悪徳の武装集団にコロリと騙されて殺されてしまうといった、かつて、ここまで悲惨な扱いを受けたエイリアンが居ただろうか?というくらい、ひどい扱いを受けていまして、特にエイリアンが来てから、20年が経過しているため、人間がエイリアンを恐れることなく、ノラネコかノライヌのようにエイリアンを扱うシーンは、これまでのエイリアン映画の常識をいい感じに覆してくれます。
そのエイリアンもゴキ○リを擬人化したような体に(本編ではエビと呼ばれていますが、あれはどう見てもゴキ○リ)、口にある触手が常にグジョグジョしているといった、かなり醜悪なデザインで、彼らに同情はできても、容易に受け入れられないものになっていて、人間が差別することに多少なりとも説得力を持たせるものになっていますが、物語が進んでいくに連れ、次第に彼らに対して魅力を感じるようになっていきます(女性は無理かもしれませんが)。
これは同胞の死に硬直するエイリアン側の主人公クリストファ、人間の子供のように無邪気にふるまうクリストファの子供といった、エイリアン側の人間くさ~いキャラクター描写の見事さによるものといえます。
人間側の主人公ヴィカスも、「エイリアン」シリーズのリプリーや、「アバター」のジェイクのようなヒーローではなく、ごく普通の人間として描かれていて、エイリアンを平然と差別し、後半あることで政府に追われる身になり、クリストファと共闘を申し出るも、すべては自分が救われたいがためで、世界やエイリアンのことなど全く考えていない自己中心的な行動を取りまくり、不快感すら憶えますが、だからこそ、ヴィカスが最後に見せる決断と行動、クリストファとの間に芽生えた感情は、深く大きな感動を呼ぶことにつながります。
これはヴィカスを演じているのが、無名の俳優シャルト・コプリー(監督の仕事仲間らしいです)であるからこそだといえます。もし、ヴィカスを、ロバート・ダウニー・Jr、ディカプリオ、ニコラス・ケイジにマッド・デイモンといった有名俳優が演じたなら、僕らはそこに無意識の内にヒーロー性を感じ取ってしまい、ヴィカスの平凡さも失われてしまい、魅力も半減していたことでしょう。
VFXは低予算(本作の予算は3,700万ドル、「アイアンマン」などは1億ドル)なので、大半はエイリアンの描写に費やされ、迫力のあるシーンは少ないですが、それが返って、大掛かりなシーンになった時に「こんなこともできるのか?」といった大きな驚きを感じることができます。
その中でもパワードスーツは、「アバター」のパワードスーツが裸足で逃げ出すほどの凄まじい暴れっぷりを見せ、無骨ながらも顔がしっかりとエイリアンしているデザインもGOODです。
また、ピ-ター・ジャクソンが製作に関わっているせいか、全編に「バッドデイスト」張りのスプラッタなシーンがあり、所々に名作映画のオマージュが散りばめられているといったヲタク映画としての側面も持っているのです。特にヴィカスの爪が剥がれ、歯を自分で抜くシーンはまんま某ハエ男です。
最後に、本作のラストは大きな余韻を残すものとなっていて、続編を望む声もありますが、僕としては続編は作って欲しくないですね。変な続編を作って、本作の良さを台無しにされたくないですから。 by Mr・サンスター
続編で台無しにされたくない…と、Mr・サンスターさんは結んでいますが、残念ながら?!、冒頭で記したように、続編の企画は進行中のようです。
なお、映画の製作費は、常に諸説あるものですが、「ディストリクト9」を製作総指揮したピーター・ジャクソンを取材した、同監督の地元のニュージーランド・ヘラルドのラッセル・ベイリー記者は、ニュージーランドのお金で約4,600万ドル=約3,000万USドルと報告しています。
また、その製作費に関連し、レビューの中で、“低予算なので、大半はエイリアンの描写に費やされ…”との記述があります。その認識に関しては、たぶん大勢の方が、それはまったく正反対の大マチガイでは…?!と、クビをひねって、クレームをつけたい衝動にかられたかもしれないので、代わって補足しておきますが、「ディストリクト9」はデジタルVFXをとにかく、ガンガン多用すれば、低予算でも立派な映画が作れる…!!ということを証明した、WETAの視覚効果技術の見本市?!のような作品だと、一般に考えられていますよね。
近年の映画は、仮りにSF映画や、アクション映画でなくとも、何気ないシーンの多くのカットが、実はデジタル合成により作られています。
以下は、「ディストリクト9」で、どのようにVFXが使われたかの例をブレイクダウンしてくれている動画です。
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