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ぼくがビリーだけで名字がないので、自分はワイルダーを名乗って、ふたり合わせて“ビリー・ワイルダー”にしてくれたワイルダーさんの連載レビュー【狂い咲きムービーロード】の第2回は、「アバター」のジェームズ・キャメロン監督から3D映画の作り方の伝授を受け、着々と準備を進めている「ヤング・スパイダーマン」をスクリーンから飛び出させてくれる予定のマーク・ウェブ監督のデビュー作「(500)日のサマー」が登場です…!!






ワイルダーです。第2回は今年公開した洋画で今の所一番気に入っている「(500)日のサマー」のレビューです。
原題の「(500)days of summer」は()の中を外しても「サマーの日々」という意味で通じるんですが、邦題は通じないのが残念なところですね。

職場の同僚サマーに恋したトムの心情を追っていくシンプルなストーリーですが、これほど片思いの男を多面的に描いた映画はそうそうありません。
恋愛での天にも昇るような気持ちと、それが裏切られ、地べたに這いつくばってしまうような気持ちがハイセンスな映像で綴られていく今作。500日間の時系列を巧みに配置し、その2つの気持ちを非常に上手く対比しているので、不規則に見える日にちの出し方(冒頭が497日目!)も見終わってみると何とわかりやすかった事かと感心します。
取り分け上手いのはトムの喪失感の表現。映画館で幸せそうにサマーとコメディ映画を観ていたと思ったら、一人でヨーロッパの古典風映画を退屈そうに観ているトムにさしかわったり、画面分割を印象的に使い、彼の理想と現実の決定的な差異を描いています。(↓動画参照。 理想は左、でも、右がトムの現実…)




最高だったのは会社のエレベーターの使い方。ルンルン気分で乗ったトムが上に昇る間に時系列が飛び、扉が開くとまるで別人のように身を持ち崩した彼が出てくるのです。
新鋭マーク・ウェブはCMやPVの監督出身で、そのセンスの映画での使いどころをしっかり心得ているようです。
本作の特筆すべき点は全く以て嫌みったらしさがないこと。基本的にトムの主観でストーリーは進んで行きますが、サマーにふられて周囲に当たり散らしてしまうような描写では、他の人物の視点等を利用し客観性を持たせて描くように工夫が施されています。混乱して酷い発言や行為に及ぶ彼を観客から突き放し、遠ざけることで、偏向した感情への移入を避けているのです。
主演のジョセフ・ゴードン・レヴィッドの名演も素晴らしく、終盤サマーに言われたある一言で今まで自分が如何に愚かだったか気付いてしまうカットで、彼は泣くでも怒るでもなく数秒の間、画面の反対に顔を向かせ、その表情をサマーにも観客にも見せません。泣き顔を彼女に見せたくないのか、それとももう顔も見たくないほど怒っているのか、その気持ちを観客が理解しようとすればするほど、彼の気持ちが胸に伝わってくるのです。
恋愛に失敗したことで自らの人生を見つめ直し、新たな出発点に立つ男を描いた「(500)日のサマー」はどんな人でも共感し、落ち込んだ全ての人を前向きにさせてくれる哲学もそなえた大傑作ですので、是非とも映画館での鑑賞をオススメします!!
ちなみに本作に登場する青い鳥は名作「南部の唄」に登場するキャラクターですので、機会があれば是非チェックを!!  by ワイルダー


Billy's comment : 南部の唄」は1946年に公開されたディズニーのハイブリッド映画ですが、当時の描写が現代においては人種的偏見の問題を抱えてしまっているため、幻の映画となりつつあります。しかしながら、日本ではVHSが出回っているはずですし、インターネット時代の恩恵として、下 ↓ のように YouTube には映画が丸ごとアゲられているようです。ワイルダーさんの文章で「南部の唄」に興味を持たれた方は、チラッとご覧ください。

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