ザック・エフロンのファンが、脱アイドルに待ったをかけ、キティ・ガロアのリベンジが遅すぎたせいで、バカたちの饗宴が盛り上がってしまった7月最後の興行レポート!!
by
Billy
2010年8月2日月曜日
クリス・ノーラン監督のSFアクション・パズラー「インセプション」が、先週から247館ものスクリーンを失いながら、絶大な口コミの威力で、客足のマイナス率を約36%にとどめ、今年2010年に公開された映画としては、「アリス・イン・ワンダーランド」、「シュレック4・エバーアフター」に続く、3本めの3週連続第1位を達成しました…!!
国内でのトータルの興行成績は、2億ドルの超大台が目前で、独創的すぎる映画に投じられたリスクの高い製作費=約1億6,000万ドル+宣伝費=約1億ドルの巨額資金を、最終的に回収できる自信が、ワーナー・ブラザースには芽生えてきたのではないでしょうか!!
その一方で、先週末に封切られた全米公開の新作映画3本は、束になって、かかっても、「インセプション」の3週連続トップの独走を止められなかったわけで、何とも、不甲斐がありません…。
そのように新作映画が思うように集客を計れなかったせいで、この週末の全米映画興行は、先週の前回(7月23日~25日)から、さらにマイナス13%の落ち込みを続けていますが、クリス・ノーラン監督が、抜け出すことが困難な夢を描いてくれたおかげで、前年同時期との比較では、およそ2割もの実績アップが実現されています…!!
★同名の舞台劇を映画化し、フランスで1998年に公開された「ディナーゲーム」(邦題「奇人たちの晩餐会」)を、おバカ映画の「オースティン・パワーズ」シリーズや、ベン・スティラーとロバート・デ・ニーロが共演した「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズなどを代表作とするジェイ・ローチ監督がリメイクしたコメディ映画「ディナー・フォー・シュマックス」を、製作・配給のパラマウント/ドリームワークスが、2,911館の約3,400スクリーンで封切った結果のオープニング成績は約2,330万ドルで、3週連続第1位の「インセプション」に僅差で破れ、惜しくも初登場第2位に着けてしまいました…!!
現在のアメリカ映画界で最も人気と言っていいコメディアン、スティーヴ・カレルが主演し、出世作の「40歳の童貞男」(2005年)で職場の同僚だったポール・ラッドと再共演を果たした本作の内容は…、会社で今一歩、昇進を果たせず、恋人のジュリーからも結婚の承諾を得られないポール・ラッドが演じる金融マンのティムが、上司から持ちかけられた千載一遇の出世のチャンスは、最も奇抜な驚きに価する人間、つまり、バカをディナーに連れて来た者が勝利し、重役のイスを得るという悪趣味なゲームだった…!!というもので、折りしも、ティムは運良く?!、国税庁に勤めるかたわら、死んだネズミを使ったアートを作ることを趣味にしている、おかしなキャラクターのバリーに出会うことに…!!
…といった物語から、スティーヴ・カレルが演じる、おかしなバリーと、大ヒット二日酔いコメディ「ハングオーバー」(2009年)のザック・ガリフィアナキス(→)が演じる、自分は人の意思を自在に操れるマインドコントロールのパワーの持ち主だと信じるアタマのおかしな人物とのバカ合戦といった、バカのライバル同士が、晩餐会でくり出すギャグの連発が、この映画の見どころとなるわけですが…、う~ん…、自分たちよりも能力の劣る人間の愚かな行為を見下し、それをバカにして笑おう!!という、本作の前提となる、上から目線極まりない設定は、前述のように悪趣味で、モラル的に考えて、時代錯誤な感じがせずにはいられません…。なのに、そんな映画が、単館のアベレージでは約8,004ドルを売り上げ、「インセプション」の同売り上げ=約7,763ドルを抜いて、新たなヒット作になってしまった…!!というのは、アクション映画ながら、観客に考えることを求めたクリス・ノーラン監督の知的な映画への揺り返しの反発にも見てとれ、ちょっとおかしな感じですね。
そんな「ディナー・フォー・シュマックス」が稼いだオープニング成績の約2,330万ドルというのは、スティーヴ・カレルがサラ・ペイリンと組み、今春4月に公開された前作「デートナイト」のオープニング成績=約2,520万ドル(3,374館)と、ポール・ラッドの演じる人物が自分に足りないものを、自分とはかけ離れた他人の破天荒なジェイソン・シーゲルに求めて、友情を育み、自分に本当に欠けていたものは何だったのかに気づくことになる…という物語のアウトラインは同じ…と言える「アイ・ラブ・ユー、マン」(2009年3月公開)のオープニング成績=約1,781万ドル(2,711館)との中間といった数字ですから、スティーヴ・カレルとポール・ラッドが組んだ結果としては順当で、ほぼ予想どおりの成績を収めています。
ただし、本作の製作費は、公称では約5,500万ドルで、「デートナイト」とほぼ同額ですが、実際はドリームワークス映画の常として、もう少し高めで、6,000万ドル以上は使われているはずなので、国内だけの興行成績では、「デートナイト」並の大ヒット=約9,847万ドルになったとしても、元手は取り返せないのかもしれません…。
ポール・ラッドのボスとして、悪趣味な晩餐会を催すのは、新生「スタートレック」(2009年)では、若きカークを導く役割だったパイク艦長のブルース・グリーンウッド(↑)。ポール・ラッドの恋人ジュリーは、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが主演した「理想の彼氏」(2009年)や、「プラダを着た悪魔」(2006年)に出演していたステファニー・ショスタク(↓)です。
本作の映画の格付けサイト RottenTomatoes での支持率は、51%で、スティーヴ・カレルの作品としては、スパイ・コメディの「ゲット・スマート」(2008年)と全く同じ支持率の評価となっています。
また、配給のパラマウント映画の調べによれば、「ディナー・フォー・シュマックス」のオープニング興行の観客の約55%が男性で、約54%が25歳以上のアダルト層だったそうです。
それでは、オリジナルのフランス映画「ディナーゲーム(奇人たちの晩餐会)」と、ハリウッド版リメイク映画の違いを、それぞれの予告編で観比べてみてください…!!
「ディナーゲーム」 予告編
「ディナー・フォー・シュマックス」 予告編
★ワーナー・ブラザースが2001年に製作・配給した、しゃべる動物映画のヒット作「キャッツ&ドッグス」の続編を、そのオリジナル映画の公開から9年を経て、3D映画として完成し、自信満々に3,705館の5,100スクリーンという超拡大公開で封切った「キャッツ&ドッグス/リベンジ・オブ・キティ・ガロア」のオープニング成績は、たったの約1,252万ドルで、初登場第5位の中途半端な順位からのスタートとなり、約8,500万ドルもの高い製作費を取り戻せそうにありません…。
トビー・マグワイアや、アレック・ボールドウィン、それにスーザン・サランドンといった人気スターが、イヌの声を吹き込み、ジェフ・ゴールドブラムが人間のキャストとして主演した前作のオープニング成績は約2,170万ドル(3,040館)で、最終的に国内で約9,338万ドルを稼ぐ大ヒットになり、全世界でのトータルでは2億ドル突破の成功を収めています。
ワーナー・ブラザースとしては、昨2009年の同時期にあたる7月24日に、ジェリー・ブラッカイマーがプロデューサーをつとめて製作し、ディズニーが封切った、しゃべる小動物映画「Gフォース」が、オープニング成績で約3,170万ドルを売り上げ、国内で約1億1,943万ドルの大台超えを果たして、全世界では3億ドル近い、約2億9,281万ドルをも売り上げた結果を目の当たりにして、スパイアニマルやったら、うちかていてるやん!!とばかりに、犬猫のエージェントたちを復活させたのでしょうが、先に今夏6月4日に公開された、20世紀FOXのイヌとネコがしゃべる映画「マーマデューク」が、やはり、ファミリー層を狙って、3,213館の拡大公開で臨んだものの、そのオープニング成績は、たったの約1,159万ドルで、本作と大差なく、今日にいたっても、国内で約3,275万ドルしか稼げずに、やはり、製作費=約5,000万ドルを回収できる見込みが立たないことからして、世間がもう、こうした動物を無理に擬人化したバカバカしいフィクションの映画に見向きしなくなってきていることは明らか…と言えそうです。
よって、失敗の結論は、ワーナー・ブラザースは続編を作るのが遅すぎた…!!のひと言に尽きそうですね。
なお、前述のディズニー映画「Gフォース」も、製作費が約1億5,000万ドル超と、いったい、どこにそれだけのお金を費やしたのか?!、よくわかりませんが、そのバカ高い投資に対して、まとまな利益は上がっていないはずです。
誰もが、どうでもいい…と思う「キャッツ&ドッグス/リベンジ・オブ・キティ・ガロア」の映画の格付けサイト RottenTomatoes での支持率は、たったの15%で、ほぼ永遠に腐敗映画に決定!!、
人間のキャストとして、本作に主演しているのは、バットマンのホモだちとして知られる、「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」(1997年)のロビンこと、クリス・オドネルです(↑)。
ボイス・キャストは以下のような人たちのほか、元007で、人間のスパイだったロジャー・ムーアも参加しています。
目から光線のミュータント、X-Men/サイクロップスこと、ジェームズ・マースデン。 |
シットコム「サマンサ Who ?」のクリスティナ・アップルゲイト。 |
イヌみたいな名前の「天才少年ドギー・ハウザー」で有名なニール・パトリック・ハリス。 |
「ドッグ・ソルジャー」(1978年)のニック・ノルティ。 |
マーク・ライデル監督の名作「ローズ」(1979年)に主演した、歌手のベット・ミドラー。 |
ワーナー・ブラザースの発表によれば、観客の約70%が10歳以下の児童とのことですが、確かにそれぐらい幼い子どもでもなければ、ちょっとついていけそうにない映画だ…と、予告編をご覧になれば、納得できます。
「キャッツ&ドッグス/リベンジ・オブ・キティ・ガロア」 予告編
★全米公開の新作映画の客足というのは、ふつう初日の金曜日から翌土曜日にかけて盛り上がりを見せ、また仕事や学校が始まる月曜日を明日に控えた日曜日には落ち込んでしまう…というのが、健全な展開です。
ところが、この「チャーリー・セント・クラウド」は、初日の金曜日(7月30日)には、約654万ドルを稼ぎ、同じ新作映画の「キャッツ&ドッグス2」=約422万ドルに差をつけていたのに、犬猫が土曜日は約1割増し、日曜日は約2割マイナスと、ま、前述のようなフツーの展開を見せたのに対し、ザック・エフロンの新作は、土曜日に大きく約32%も集客をダウンさせたのが、さらに翌日曜日には、また3割減と、歯止めがきかない状態となってしまいました…。
というわけで、ジャーナリストのベン・シャーウッドが、2004年に出版したスピリチュアルな感動を呼ぶ小説「チャーリー・セント・クラウドの死と生」を、人気のザック・エフロンを主演に起用して、映画化したユニバーサルが、2,718館で封切ったオープニング成績は、まったく物足りない約1,213万ドルで、なんと初登場第6位という、思いがけない下位ランキングからのスタートとなっています…!!
この映画のメガホンをとったのは、ザック・エフロンの前作となるワーナー・ブラザース作品「17 Again」(2009年4月公開)を作ったバー・スティアーズ監督で、同映画のオープニング成績は約2,372万ドル(3,255館)で、最終的に国内で約6,436万ドルを売り上げ、製作費の約2,000万ドルそこそこを、キッチリと回収し、利益をあげています。つまり、ザック・エフロンとバー・スティアーズ監督のコンビには、それだけを売り上げられるポテンシャルがあるにもかかわらず、それがどうして、「チャーリー・セント・クラウド」では、半減とも言えるほど、大きく数字を落としてしまったのか…?!
まさに、その失敗のミステリーの答えこそは、前述の初日金曜日から土曜日にかけて、本来は上昇すべき売り上げがダウンしてしまった反比例の動きに着目すべきで、その数字の転落からは、ザック・エフロンの最新作を真っ先に観ようと駆けつけた熱心なファンが、この映画を気に入ってくれなかったんだ…という反応を、如実に読み取ることができます。
そのため、ザック・エフロンの映画を絶対に観てくれるはずのファンも、「チャーリー・セント・クラウド」のザック・エフロンは、ザック・エフロンらしくない…という口コミに影響されてしまい、だったら、今回は映画館でお金を払って観ることは控えようか…という負の連鎖を被った結果、ふつうとは異なる流れの数字の推移を、この映画はたどってしまった…と、ひとまず、興行分析の仮説を示すことができそうです。
と、以上をより噛み砕いて述べるならば、「ハイスクール・ミュージカル」シリーズの成功で、スーパーアイドルとなり、スターダムにのし上がったザック・エフロンのファンは、自分たちがザック・エフロンに惚れこんだ「ハイスクール・ミュージカル」に通じるものがある、「ヘアスプレー」(2007年)や、「17 Again」のような明るい青春映画はよろこんで観に出かけるが、ザック・エフロンが弟を交通事故死させてしまった…という重荷を背負い、暗い死のイメージがある「チャーリー・セント・クラウド」には拒否反応を示してしまった…ということですね。
本作で脱アイドルを目指したザック・エフロンは、この映画で初めて、演技力が評価され、そのプロフィールを見直され始めていますが、そうした自分の成長を支えてくれるはずのファンが、皮肉にもザック・エフロンの脱アイドルに待ったをかけ、大人の俳優としての第一歩を後押ししてくれなかったわけで…、ザック・エフロンの膨大なファンの集客を期待し、「17 Again」の製作費の倍以上に相当する約4,400万ドルを投入した製作・配給のユニバーサル映画は、まったくアテがはずれてしまったに違いありません…。
ザック・エフロンは一体、これから、どういうキャリアを歩めばいいのでしょう…?!
なお、本作の映画の格付けサイト RottenTomatoes での支持率は、26%で、ユニバーサル映画の調査によるオープニング興行の観客の状況は、約8割が女性で、全体の約6割が25歳以下の若年層だったそうです。
ザック・エフロンが主演作を、自分で解説してくれている予告編
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