CIAの映画フォーラムの常連で、先月9月半ばに“秋のサスペンス映画祭り”というお題で、複数の映画の感想を、CIAリーダーのみなさんに求められた L・P さんが、そのテーマにあげた映画のうち、まるで反応がなかった「ミケランジェロの暗号」をご自身でご覧になり、レビューをフォーラムに投稿してくれました…!!、フォーラムへの新しい投稿は、これまで Facebook のファンページで告知をしていましたが、 L・P さんの「ミケランジェロの暗号」のレビューは長文で、しっかりと書いてくださったので、今のところ、そんなに大勢の目にふれるわけでもないフォーラムに置いておくのは、もったいないと思い、ブログの記事として取りあげ、紹介させて頂くことにしました。転載にあたっては、 L・P さんの連絡先がわからないので、この記事をもって事後承諾をお願いする格好となりますが、サイトやブログの一部であるフォーラムに投稿されたもののうち、特に紹介する価値のあるものを、記事にするのは、一般によく行われていることなので、ご了承いただければ…とお願い申し上げます(もし転載したことに問題があれば、削除しますので、CIA までお知らせください)。
そういったわけで、CIA では、話題の新作映画の感想を求める “Sound Off” 以外にも、読者の方にメールで映画レビューの投稿を呼びかけてきましたが、今後はフォーラムにいつでも自由に投稿していただき、そのうちから、これは…!!といったものをピックアップして、こうした記事の体裁で紹介していくことにしたいと思います。
なので、映画の新旧東西やジャンル、文章の長い短いを問わず、まずはお気楽にあなたの映画の感想をふるって、フォーラムに書きこんでもらえれば…と願います!!、L・P さん、いつもフォーラムを盛り上げるよう、投稿いただき、本当にありがとうございます…!!
昨日の10月1日、映画の日にやっと、「ミケランジェロの暗号」を見てきました!!、諸事情あって観るのをやめようかと思っていた所、急遽行ってきたため、冒頭5~15分くらいもの間を見逃してしまったのですが、それでも見た後の感想は、最高におもしろかった!!というところですね。
第2次世界大戦中、オーストリアのウィーンに住むユダヤ人画商一家の息子ヴィクトル・カウフマンは、幼少期からのドイツ人の親友ルディ・スメカルと供に、ベルリンから帰郷した折り、一家の至宝である幻の“ミケランジェロの名画”のありかを教えてしまう。
実は既にこの頃からナチスに傾倒し始めていたルディは、この絵画を上官に示して出世に利用しようとし、そのことを事前に察知したヴィクトルの父ヤーコブがある秘策を建てミケランジェロを隠蔽するが、その結果、一族は強制収容所に送り込まれてバラバラになり、絵画も没収される…。
数年後の1943年に、ナチス・ドイツは同盟国であるイタリアとの友好強化のためムッソリーニに対してミケランジェロの絵画を献上しようと計画し、その任務をルディと彼の上官が請け負うが、絵画が贋作であったことが判明し、追い込まれた2人は、当時収容所に居て同じ仲間から父親の残した絵画の手がかりを知る為の暗号を聞いていたヴィクトルを連れ出し、ありかを吐かせようとするが、その道中で飛行機が墜落し、乗っていた2人は反ナチス抵抗勢力から逃れる為に、お互いに服装を入れ替え、別人としてドイツに潜伏することになり……。
「ミケランジェロの暗号」 予告編
2006年度の第80回アカデミー賞長編外国語映画賞を受賞したオーストリア映画の傑作「ヒトラーの贋札」の制作陣が数年ぶりに再集結し、「es」等でお馴染みドイツ人の名俳優、モーリッツ・プライプトロイやゲオルク・フリードリヒに、ウルスラ・シュトラザウスら実力派俳優人らが脇を固めた良作です。 古き良き60年代のアメリカン・ギャング達はシナトラを愛し…、ヒトラーはワグナーを愛し…という、歴史上の極悪人ほど偉大なる音楽家や芸術家を尊敬していた、という事実をモチーフにとった新鮮な作品。
この作品は通常とは大きく異なり、60年代生まれの気鋭のヴォルフガング・ムルンベンガー監督(写真)の痛快で、時にやたら無闇なほど大胆な空想的かつ現代的な演出と、実際の戦時体験もあるユダヤ人の老練の脚本家、ポール・ヘンゲがリアリティを加える…という、本来なら抽象的で曖昧な脚本に、監督が映像を使いこなして現実味を与える普通とは反対の、かなり異色な構図になっています。
劇中では父親の肖像画が画面に映りこむたびに、彼のいった言葉の意味(*ネタバレ御免「私の目の前から消え去れ」とは!?)について連想させられ、考え込んでしまう…といった、地味ながら非常に効果的な手段も使われており、会話劇に頻繁にルディの勝手な中断によるリズムの崩壊を挿入することで、かえって会話をヒートアップさせるようなユニークな脚本的技法も見受けられて非常に楽しいです。
まるでヒッチコックのカン違いお尋ね物劇「北北西に進路を取れ」を連想させるような、飛行機の登場する場面に胸を躍らせることもあり、ロマン・ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」に意匠を重ねられたような戦時下の建物内での家族同士での対談を含んだ家族劇的要素もあります。
また、ドイツ人のナチス将校に華麗に成りすますモーリッツ・プライプトロイが見せるユーモアたっぷりのコミカルな名演技や、「ぞっとするがね…この制服を着たくなる気持ちも分かる気がするよ」といったセリフで時折り垣間見せる不気味な側面を見事に描きつつも、 戦時中に別れて離れ離れになり、今は旧友であったルディの妻である元恋人の女性との思いがけない再会に涙ぐんだり、父の残した絆の重さや、過酷な戦中の収容所生活の中にあっても大切な母親のことを忘れない家族愛なども丹念に描かれ、 そして、どんな苦境や窮地に陥っても絶対に希望を捨てず、かつては友だった卑劣なナチスの男との死闘に巻き込まれながらも、決して諦めない主人公のたくましく強い心、その不屈の闘志に心を打たれ、勇気を貰い、強烈な感動をもたらすこともできます…!!
そういった主人公の内面に熱い共感を寄せることで、今作は辛い現実の中にも明るい、スカッとするような爽快なトーンを観客に対して与え惹きつけますし、特にこの作品の原題「Mein Bester Feind=わが最良の敵」の持つ意味や、父親が残した言葉の意味が明らかになるラストシーンは、思わず「やったぜ!」と腕を高々と振り上げてガッツポーズしたくなるような深い余韻のある魅力たっぷりの鑑賞後感を与えてくれます!!
この話自体歴史劇風に撮りながらも、実際には到底ありえない荒唐無稽なおとぎ話のような内容なのですが、ヒトラーとムッソリーニの関係や(恐らく)実在の名画「ミケランジェロの絵画」等の様々な具体的要素を随所に取り入れて見せ、前述の重々しい余韻と光る海岸線のような感動を残してくれて、それこそ「現実の中の夢」を体現するようだった「ヒトラーの贋札」に比べれば、実話ベースではあっても、実話そのものではない軽々しいタッチで小気味良くつむがれるアップテンポの筋書きで、まさに「夢のような現実」。本編鑑賞後に僕が真っ先に考えた、頭に思い浮かべた単語の一つを文字通り絵に描いたような話の流れ、そして結末の秀作になっています!! by L・P
【注意】本文の二重使用・無断転載厳禁。引用は当ブログ名を明記し、リンクをお願いします。特に某映画サイトのライターは文章を丸々コピーしないこと!!
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