Uncharted : 人気ゲーム「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」の映画化から、デヴィッド・O・ラッセル監督が降板した事情は、独自の解釈でゲームとは無関係な家族の物語に変えるプランを、製作のソニー・ピクチャーズが完全否定したという当たり前の理由!!
by
Billy
2011年5月28日土曜日
小説にしろ、コミックやゲームにしろ、何かを映画化するというのは、とりもなおさず、その元の作品に魅力があるから、お金と時間を費やし、わざわざ映画化するのであって、その過程で内容を大きく変えてしまっては、本来の目的を失い、企画の意図から外れるばかりか、下手をすると原作を否定したとも受けとられかねません。そうした誤まった映画化の結果、リスクを軽減するために寄り添おうとアテにした潜在的な観客である肝心要の原作の既存ファンからブーイングの反感を買ってしまうことになるのは、今さらドラゴンボール風アクション映画「EVOLUTION」(2009年)の失敗の前例をあげずとも、誰だって察しがつくはずなのですが…!!
昨2010年10月に、ソニー・ピクチャーズが製作発表を行った、プレイステーション3の人気ゲーム「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」の映画化で、監督に起用されたデヴィッド・O・ラッセルが降板するにいたったことを、業界メディアの Deadline が、現地昨日の5月26日付けで報じたのですが、その記事を執筆した、おなじみのマイク・フレミングは、なぜ?!、デヴィッド・O・ラッセル監督がプロジェクトから去る運びになったのか?!の理由については、ひと言も記載していませんでした。
しかしながら、あえて理由は語られずとも、同映画にマーク・ウォールバーグの主演が決定したのにあわせて、お伝えしたように、デヴィッド・O・ラッセル監督の映画版「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」では、原作のゲームには登場しない父親や、おじさんといった、主人公の親族が新たな登場人物として加えられ、元のゲームとは、かなり内容が違うらしい雰囲気でしたから、それが原因だろう…と、誰もが薄々、感づいたのですが、その読みにまちがいはなく、続報を報じたロサンゼルス・タイムズによれば、製作のソニー・ピクチャーズは、前述の昨年秋以来、デヴィッド・O・ラッセル監督が進めてきた企画開発の成果を、すべてスクラップにし、同監督の書き上げた脚本は一切、使わないそうです…。
本来はひとりで冒険に挑むヒーローのネイト・ドレイクが、ロバート・デ・ニーロのお父さんに、ジョー・ペシのおじさんという、いささか御歳を召した元ギャングのような人たち?!をともない、エッチラオッチラと家族でお宝探しに行くらしいことで、もはや、元のゲームとは似ても似つかぬ別ものではないか?!と懸念していた「アンチャ」ファンの人からすれば、ソニー・ピクチャーズがよくぞ、軌道修正の英断を下してくれた…!!という感じですが、しかし、そもそも、「ザ・ファイター」(2010年)という、身内の問題をからめた畑違いの映画で才能を発揮した監督に、「アンチャ」を映画化させようとしたソニーが見当違いだ…と、この半年あまりの作業と、それに関係する費用が無駄になったことについて、自業自得のように思う人もいるかもしれません。
このソニー・ピクチャーズの監督起用の失敗は、20世紀FOXが「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)のブライアン・シンガー監督に、コミックヒーロー映画の「X-MEN」(2000年)を作らせて成功したことや、ワーナー・ブラザースが「メメント」(2000年)のクリス・ノーラン監督を「バットマン」シリーズに起用したのが正解だったこと、またドタキャンで実現しなかったとは言え、やはり、20世紀FOXが「ザ・ウルヴァリン」の監督に、「ブラック・スワン」(2010年)の天才ダーレン・アーロノフスキー監督を据えようとしたことなどをヒントに倣い、多少は畑違いでも良質の映画を作れる才能の持ち主なら、娯楽映画の大作を、さらに観応えのあるものにしてくれるだろうという期待にもとづいて、「ザ・ファイター」のデヴィッド・O・ラッセル監督を見込んだところ、同監督は同監督らしく?!、「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」のヒーローのネイト・ドレイクを、「ザ・ファイター」と同様に家族の問題を抱えた主人公に変え、「スリー・キングス」(1999年)や、「ハッカビーズ」(2004年)のように、3人の物語にしようと、自分の作家性を投じてしまったことになります。
以上の経緯から、デヴィッド・O・ラッセル監督は商業意識に欠ける…といった否定的な解釈も可能でしょうが、ミスマッチな監督起用で、映画化を際立たせようとする狙いが、ミスマッチなのだから当然、リスクを背負っており、本来の映画化の目的から逸脱しかねない…という当たり前のことが、あらためて教訓としてハッキリしたように思えます。
ソニー・ピクチャーズは、デヴィッド・O・ラッセル監督がプロジェクトに参加する以前に、「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(2005年)や、リメイク映画の「コナン・ザ・バーバリアン」(8月19日全米公開)といった、主に娯楽映画を手がけている脚本家コンビのトーマス・ディーン・ドネリーと、ジョシュア・オッペンハイマーの執筆したシナリオに回帰し、新たな監督を探して、「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」の映画化を引き続き進めるそうですが、デヴィッド・O・ラッセル監督の降板にともない、相棒のマーク・ウォールバーグも主演を辞退するでしょうから、プロジェクトはまったく、昨年秋以前の状態に戻るので、予定されていた来年2012年中の公開は、かなり疑わしくなってしまいましたね。
しかし、それでも、原作と違う映画を作っても意味がない…と、白紙にできるソニー・ピクチャーズは、やはり、同日に監督が降板したものの、プロジェクトの内容に特に変わりはないらしい「AKIRA/アキラ」のワーナー・ブラザースよりは、賢明な印象を世間に与え、期せずして同じ事態に遭遇した両社は、先の展望においては明暗をわけてしまったように窺えます。
CIAリーダーのみなさんは、「アンチャーテッド/エル・ドラドの秘宝」と「AKIRA/アキラ」の映画化にあたってのそれぞれの取り組み方の違いや、デヴィッド・O・ラッセル監督の後任は、ならば誰がよいのか?!など、一連の監督降板劇について、どのように思われたでしょう…?!
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