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11月第4木曜日のサンクスギビング・デーの感謝祭は自宅で家族と過ごす人が多いのに加え、その翌日の金曜日が年末商戦のバーゲンが始まる“ブラック・フライデー”で、クリスマスのギフトなどを買い込むことになるため、その出費の加減と相談して、映画はやめておこう…となったり、家族で観られる映画でなければ…となることから、映画館にとっては、けしてよい事ばかりではないホリデイ・ウィークエンドの感謝祭シーズンですが、今年2010年の全米映画の感謝祭興行全体の売り上げは、およそ2億5,500万ドル前後にのぼる見込みで、過去の同シーズンの興行実績との比較で、歴代第2位となる目覚しい売り上げを記録できたばかりか、実際のところ、感謝祭興行史上最高の売り上げを記録した前年同時期から、わずかに約6%しか下落していません…!!

         昨2009年感謝祭興行BEST3(5日間の売り上げ)
          第1位 「トワイライト・サーガ/新月」…6,627万ドル
          第2位 「ブラインド・サイド」…5,751万ドル
          第3位 「2012」…2,522万ドル

この映画界に好景気をもたらしてくれた最大の貢献者が、2週連続の第1位を達成したワーナー・ブラザースの「ハリー・ポッターと死の秘宝」であるのは述べるまでもありませんが、それに匹敵して、劣らない驚きの活躍を髪の長すぎるプリンセスが果たしてくれていることには注目をしなければなりません…!!






感謝祭の封切りに先がけ、ディズニー・アニメーションのエド・キャットムル社長と、実際のアニメ製作を統括する責任者であるチーフ・クリエイティヴ・オフィサーのジョン・ラセターがそろって、ディズニーの伝統として、年々作られてきたお姫さまアニメの製作を打ち切る…と宣言したことから、ディズニーアニメ50本めの記念作にして、最後のプリンセス・ストーリーとなってしまった「塔の上のラプンツェル」を、ディズニーが全米3,603館の約5,400スクリーンで封切ったオープニング成績は大変、優秀な約4,910万ドルで、1館あたりの売り上げに置き換えると約1万3,628ドルとなることから、2週連続第1位の「ハリー・ポッターと死の秘宝」のアベレージ=約1万2,205ドルを上まわり、実質的には第1位として、今秋の感謝祭興行の塔の頂点で、ラプンツェルが長い髪をなびかせていたことになります…!!
しかし、このディズニーの成功の背景には、ワーナー・ブラザースが「ハリー・ポッターと死の秘宝」のフェイク3D化に挫折し、3Dシアターから撤退したことで、「塔の上のラプンツェル」が2,413館の3Dスクリーンを確保できたという要因があるため、ワーナー・ブラザースは期せずして、最大ライバルのディズニーに塩をおくった格好となっているのが皮肉です。

グリム童話の「髪長姫」をもとに、スーパードッグのアニメ「ボルト」(2008年)のバイロン・ハワードとネイサン・グレノの監督コンビが作り上げた、すでに名作の「塔の上のラプンツェル」が初日の水曜日(24日)から日曜日(28日)までの感謝祭興行の5日間で売り上げたトータルの興行成績は約6,900万ドルで、その数字は感謝祭に向けて封切られた新作映画としては、王座の「トイ・ストーリー」(1999年)の約8,010万ドルに次ぐ、感謝祭史上第2位の飛躍的な記録となり、同ランキングの第3位が「魔法にかけられて」=5日間で約4,906万ドルであることから、ディズニーがBEST3の独占を達成し、冒頭に記したように家族向け映画のピークである感謝祭興行の覇者が、やはり、ファミリー路線の王道を行くディズニーであったことが、あらためて数字でハッキリと示されました…!!


それでは、ここで当然、前述のジョン・ラセターらが、お姫さまアニメを終了することを決めるキッカケとなったシリーズ?!の前作「プリンセスと魔法のキス」と最新作の「塔の上のラプンツェル」との成績を比較してみなければなりませんが、「プリンセスと魔法のキス」も前年同時期に公開されたとは言え、同アニメ映画は感謝祭のホリデイ・ウィークエンドにおいては、たった2館の限定公開という助走をつけるような封切られ方で、その後、公開3週めとなる12月11日において、ようやく全米公開に切りかえられています。
その「プリンセスと魔法のキス」の全米公開時のオープニング成績は…、

「プリンセスと魔法のキス」(2009年11月25日全米公開/製作費1億500万ドル)
拡大公開オープニング成績/2,420万ドル(3,434館) 国内1億440万ドル+海外1億6,264万ドル=2億6,704万ドル

…といったもので、「塔の上のラプンツェル」が圧倒的に勝っているのは、一目瞭然ですね。

同様に、3年前の2007年の感謝祭の前日の水曜日に全米公開という同じパターンで封切られた、プリンセス・エイミー・アダムスにいちいち“プリンセス”をつける所以である、彼女が実写映画で“生身”の“ディズニーのお姫さま”という難しい役どころを絶妙なバランス感覚で演じきった、現代アメリカ映画の最高傑作の1本となる前述の「魔法にかけられて」の成績を詳細にチェックしてみると…、

「魔法にかけられて」(2007年11月21日公開/製作費8,500ドル)
オープニング成績/3,444万ドル(3,730館) 国内/1億2,780万ドル+海外2億1,268万ドル=3億4,048万ドル

…とのことで、1館あたりのアベレージの売り上げは約9,223ドルとなりますから、3D上映の割増しぶんの恩恵があるとは言え、「塔の上のラプンツェル」の方が人気を集めているのは明らかです。


このように「塔の上のラプンツェル」が大成功をおさめた理由としては、今年2月にお伝えした、英語の原題が当初のヒロインの名前をとった、あからさまにプリンセス・アニメを思わせるタイトルの「ラプンツェル」から、ジェンダーをイメージさせない「タングルド」に改められた根拠である観客層の拡大を目指したマーケティングの方針転換が功を奏したものと考えられており、ディズニーは従来の少女向けアニメとしては考えられない深夜帯にTVスポットのCMを放送し、子を持つ両親を含む大人に向けてのキャンペーンを行ったほか、先週の月曜日(22日)に冗談半分に“PSA”と題して、写真を紹介したように、スポーツイベントの会場に、プリンセスのラプンツェルとヒーローの盗賊フリンが登場!!といったパフォーマンスを行って、男性向けのアピールも怠りませんでした。


そうした「塔の上のラプンツェル」はディズニーの“いつものお姫さまアニメ”ではありません!!、老若男女の誰もが楽しめるアニメです!!という否定と肯定をない交ぜにしたプロモーション展開と、急成長を遂げるライバルのドリームワークス・アニメの特徴である現代的なタッチをうまく取り込んで、ディズニーの伝統的スタイルとかけ合わせた作風とがマッチし、目的とした観客層の拡大が果たされ、「ハリポタ」に迫る観客動員が実現できたようです。


なので、結論として「塔の上のラプンツェル」は、最初に記した“最後のプリンセス・ストーリー”ではなく、ディズニーアニメが時代に即した新境地に踏み込んだ第1歩と解釈する方が正しいのかもしれません。
よって、ピクサーのジョン・ラセターが指揮するディズニーアニメは、この「塔の上のラプンツェル」で実践されて、以上のように大成功をおさめた方程式に基づき、ディズニーの伝統的なプリンセス・アニメの余韻を残しつつも、性の差別を問わない万人を観客の対象とした作品を発表していく…ということになりそうですね。
なお、ディズニーのアニメの評価を問うのは愚問ですが、「塔の上のラプンツェル」の映画の格付けサイト RottenTomatoes での支持率は87%で、当然、フレッシュな新鮮映画に認定!!、Metacritic では、33件のレビューのうち、絶賛が28件で、まぁまぁが5件、否定的な見方は皆無!!といったデータから、72ポイントをつけ、鑑賞しても絶対に安全のグリーン・ゾーンに置いています!!


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